研究課題/領域番号 |
18K10551
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研究機関 | いわき明星大学 |
研究代表者 |
小林 紀明 いわき明星大学, 看護学部, 教授 (10433666)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多職種連携 / 介護支援専門員 / 協働的能力 / ケアマネジメント / 地域連携 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護支援専門員(以下、CM)のケアマネジメント能力における多職種連携に必要な「協働的能力」を検証し、その具体的な内容と構造について明らかにすることである。 先行研究では、CMと多職種との連携協働における困難さや問題点の抽出にとどまり、連携協働の成功例とその原因、そこに至るまでのプロセス、あるいは問題の解決策に言及した研究成果は示されていない。従って本研究は、CMと多職種との連携協働における困難さや問題点を解決できる能力(行動特性)=「協働的能力」に焦点を当てた。「協働的能力」とは、春田ら(2016)が開発した「協働的能力としての多職種連携コンピテンシーモデル」を意味する。 本年度は、3段階調査の第1段階:調査1を実施した。地域包括支援センターに勤務するCM13名を対象に、多職種との連携における充実感や困難感を感じたケースにおける具体的な対処行動について、半構造化面接法による約60分程度のインタビュー調査を実施した。インタビューデータは、質的帰納的手法を用いて分析し、既存の「協働的能力」と比較検討した。 その結果、CMのケアマネジメント能力における多職種連携に必要な「協働的能力」に焦点を当て分析した結果、1)コミュニケーション力、2)職種間での情報共有、3)関係性に働きかける、4)連携を高めるための自己研鑽、5)目標や方向性を共通認識する、6)ケアマネジャー間連携・能力向上、7)自職種を省みる、8)他の職種を理解する、9)積極的な言動、10)多職種のやる気を引き出し役割を与える、11)専門性の尊重、12)受容・調整する、の12の焦点的コーディング(=協働的能力)が抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、トライアンギュレーションの研究デザインを用い、3段階の調査によって構成した。当初の計画では、調査1の介護支援専門員(以下、CM)を対象とした質的研究(半構造化面接法によるインタビュー調査)で、多職種連携に必要なケアマネジメント能力の中の「協働的能力の具体的要素」を抽出し、調査2として、在宅でサービスを利用しながら療養生活を営んでいる利用者またはその家族を対象とした質的研究(半構造化面接法によるインタビュー調査)から「利用者・家族が認識する有効なサービスに関連する協働的能力」を抽出し、調査1の結果および先行研究とすり合わせ、CMの「協働的能力」を測定するオリジナルの調査項目を整理する。その後、調査3で、全国の居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターを無作為抽出し、そこで勤務するCM(約20,000名)を対象として、調査1・2から得られた「協働的能力の具体的要素」及び「利用者が認識する有効なサービスに関連する協働的能力」と、先行研究結果とのすり合わせにより、CMの認識を測定する「協働的能力」調査項目を作成し自記式質問紙調査を実施する予定であった。 しかし、途中経過の中で調査2と調査3を入れ替えることに変更した。調査3は、全国データによって見えるCMの協働的能力の様相であり、その結果を踏まえて、調査2の利用者及び家族へのインタビューを実施することで、各データを生かしやすくなる(サービス提供者側とサービス受給者側の対比など)と考え計画を変更した。また、調査1のデータ収集が予定よりも時間を要したため、これらの要因が重なり、今年度は第1段階の調査1までしか実施できなかった。 現在は、調査1の結果から得られた12の焦点的コーディング(=協働的能力)を概念枠組みを構成する因子として仮の構造図と各因子の下位尺度を抽出して調査2を開始できる準備を整えている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、昨年度実施した調査1から得られた「協働的能力の具体的要素」と先行研究結果とをすり合わせ、調査2の全国の居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターで勤務しているケアマネジャーを対象にした「協働的能力」に対するケアマネジャーの認識を測定するオリジナルの調査項目を用いた自記式質問紙調査票を作成し、5月~6月にはプレテスト、本調査実施へと進める予定である。調査2で得たデータは、因子分析を行い因子構造と内容の信頼性を検証する。 その後、8月~9月を目途に、調査2から得られた分析結果をベースに、調査3のインタビュー内容を構築し、医療保険または介護保険による複数のサービスを利用しながら在宅で療養生活を営んでいる利用者またはその家族を対象としたインタビュー調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度内に実施予定だった調査2[全国の居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターを無作為抽出し、そこで勤務するCM(約20,000名)を対象として、調査1から得られた「協働的能力の具体的要素」と、先行研究結果とのすり合わせにより、CMの認識を測定する「協働的能力」調査項目を作成し自記式質問紙調査の実施]が未実施だったため、その分の経費(¥2,314,800)が平成31年度分へ移行され、31年度に実施する。 また、開始年度の計画当初に、平成31年度の実施予定である調査3として計上した予算額(¥1,040,000)は、そのまま計画通り実施する予定だが、調査2の進捗状況を見ながら進めることになるため、8月~9月頃を目途に、調査3を実施できるよう計画を調整していく予定である。
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