本研究の目的は,在宅においても実施可能な棒またぎ体操をトレーニングとして継続した際の,歩行パラメーター(歩幅,運動耐容能)に対する効果を明らかにすることであった。 倫理的配慮として,湘南医療大学研究倫理審査委員会の承諾を得て実施した(承認番号: 第18-021号)。本研究は研究1と,研究2で構成し検証した。 研究1の対象者11例は,全てが男性で,年齢は21.6±1.0 歳,調律的聴覚的合図(以下RAC)は113.2±4.4 bpmであった。研究1の結果,障害物をまたぐ際の障害物間距離(以下,TC)は全てのRACの試行で,先行肢に比べて後続肢で小さい傾向であった。また,障害物の高さが10cm負荷の試行では,3% のケースが躓いた。歩幅身長比は,障害物の高さが2.5cm,かつ120%RACを越えると基準値となる31.0%を超えてくることが確認できた。一方,障害物の高さが10cm かつRACが160 %の試行では,オーバーワークになる傾向がみられた。これらのことから,棒またぎ運動での有効な至適強度は,2.5cm高の障害物で120%RAC,もしくは2.5cm高の障害物で140%RACが妥当であると考えられた。 研究2の対象6例は,全てが高齢女性で,年齢は74.7±4.3 歳,四肢骨格筋量は5.4±0.4 kg/m2,握力は21.0±2.9 kgfであった。運動プログラムとして,4週間にわたって在宅で棒またぎ体操(2.5cm高の障害物で120%RAC)を実施してもらうように指導し,遂行してもらった。介入後の身体運動機能の変化をみるとTwo square step test(以下,TSST)スコアと等尺性膝伸展筋力(以下KE),および6分間歩行距離(以下,6MD)が増加していた。 棒またぎ体操の至適強度は,2.5cm高の障害物で120%RAC,もしくは2.5cm高の障害物で140%RACの運動負荷で行うことが望ましいと考えられた。また,棒またぎ体操を継続することでTSSTスコアだけでなく,KEと6MDが改善する可能性が考えられた。
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