高齢期の健康づくりには役割を通じた健康づくりが欠かせず,特に60歳代は,就労や家庭内において様々な役割の変化に直面する世代と言える.しかし,複数の役割を想定した検討は少なく,必ずしも十分とはいえない.そこで本研究では,60歳代地域在住者の社会的役割と健康状態との関連を明らかにすることを目的とした.本研究にて,社会的役割と健康状態との関連が明らかになることは,高齢者世代が健康状態良好で,社会の支え手として活躍し続けながら健康状態を維持することの検討の一助になると考える. 平成30年度は,インタビュー調査を実施し,成果発表を行った.翌年には,60歳代の社会的役割の頻度と健康状態(HPLPⅡ等)に関するオンライン調査1回目を実施し,基礎的分析を行った.次に,対象を地域住民として自治体でのアンケート調査の実施した.男性は女性に比べて健康増進行動が少なく,生きがい意識が低いこと,60歳以降では,男女共に家庭内外の役割は就労が多いが,日数等は多様であること,男性ではボランティア無し群に比べて有り群の心身の健康状態が良好であることが明らかになった.最終年度には,オンライン調査2回目を実施し,1回目の回答者の約6割を追跡することができた.追跡した対象者分析は,1270名で,5段階の健康状態評価は,良い・まあ良い・普通を合わせると82.3%であった. 以上の調査結果から,地域在住の60歳代健康状態は良好である者が多いが,就労以外の役割を担う者の割合は低く,役割によって健康状態が異なることが明らかになった.対象者の特性を把握したアプローチが重要である. 本研究の結果については,学術論文としての発表に向けて作業を進めており,一部はすでに学術論文として投稿し,審査中である.
|