研究課題
近年,病院機能分化が進み,在院日数の短縮化に向けて,早期退院から地域へ移行する連携や,高度医療提供による看護業務の複雑さや多様化により,ストレスが多い環境下での勤務であることが推察される。業務量の多さや業務内容の特殊性,そして,睡眠の時間帯を意図的に変える必要があるため,慢性的な疲労や心理的ストレスを抱え,うつ病など精神保健上の問題を引き起こしやすいと考えられる。看護職では,睡眠時間の不足あるいは質の低下が心理・身体的ストレスを引き起こしたり集中力の低下を引き起こし勤務に影響を与えていると報告されている。これまでになかった働き方により,疲労の性質が身体的で見えやすいものから,精神的・情動的・神経的で見えにくいものへと変容し,休日を挟んでも疲労がなかなか回復しないことが増えていると考えられている。労働者の疲労度を鑑みれば,勤務後や休日などの生活の場も踏まえた検討が必要である。看護師の場合,日中の心理・身体的ストレスが入眠障害や過覚醒といった睡眠障害の原因になっている可能性や,睡眠障害による心理・身体的ストレスへの影響が考えられる。これまでの看護師の調査は,交代勤務時や交代勤務を行っていない日勤帯のみの看護師の心理的ストレスの調査は行われている。しかしながら,職場間の比較(病院と訪問看護ステーション勤務)や時間的余裕がある休日も含めた心理的ストレスと睡眠の質と量を同時に評価したものはない。勤務時の調査において病院勤務の看護師は,睡眠の質や量も,睡眠状況の悪い傾向であったと考えられた。休日時では,ストレスフリーが予測されるにも関わらず,自覚的ストレスや睡眠の質や量ともに,病院勤務の看護師の方が有意に高値となった。この結果から,勤務時に受ける過度なストレスが休日時にまで及んでおり,ストレスフリーである休日も,抑うつや不安の自覚的ストレスが高い状態が継続していることが推測される
3: やや遅れている
コロナ禍による感染予防、そして、対象者が病院や訪問看護ステーション勤務の看護師のため、調査を一時中断せざる終えない状況であった。今後、ワクチン接種の状況を見極め、調査を再開する。
ストレスに対するアプローチ方法の一つにマインドフルネス瞑想を用いられることが多くなり, 注目を浴びている。マインドフルネスとは,「評価を伴わず,今ここでの体験へ注意を向けること」と定義されている。マインドフルネス瞑想の中のマインドフルネス・ストレス低減法やマインドフルネス認知療法と呼ばれる心理療法があり,うつ病をはじめとする多様な治療に効果があるとされている。これらは精神医学的,身体機能的,ストレス関連症状の改善に効果があると明らかになっている。そこで,看護師を対象とした勤務時と休日時において,抑うつ傾向が持続しているものおよび睡眠が持続しているものに対してマインドフルネスを1ヶ月介入し,マインドフルネスが自覚的ストレスや睡眠に与える影響を明らかにする。そして,マインドフルネスによる生体のストレス適応反応とその機序を解明するために,ストレス関連バイオマーカーである唾液メラトニンと唾液セロトニンを用いて,自覚的ストレスおよび睡眠状況と関連づけて経時的に追跡して評価を行う。
コロナ禍において、調査が順調に進まなかった。特に看護師への調査のため、施設への入構が制限された。現在、ワクチン接種ならびにPCR検査の拡充が行われており、今年度は調査を実施し、論文を作成する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
International Medical Journal.
巻: 27 ページ: 620-623
International Medical Journal
巻: 27 ページ: 616-619
Journal of Physiological Anthropology
巻: 39 ページ: 1-11
10.1186/s40101-020-00227-9