研究課題/領域番号 |
18K10584
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
檪 直美 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (80331883)
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研究分担者 |
尾形 由起子 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (10382425)
田中 美加 北里大学, 看護学部, 教授 (70412765)
江上 史子 福岡県立大学, 看護学部, 助教 (80336841)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 家族介護者 / 介護力 / 認知症カフェ / 多職種 |
研究実績の概要 |
H31年度の目的は、前年度明らかとなった課題に取組むことである。課題としてまず地域住民開設の認知症カフェでは専門職の継続的な介入の難しいことであり、次に認知症カフェの機能として専門職へつなげるためのスタッフ育成の難しさである。そこでH31年度は認知症カフェ開設に向けた専門職による新たな人材育成の取組みと、その後の追跡調査により、認知症カフェ開設に向けた動向について調査を実施した。まず専門職による人材育成については医師、歯科医師、看護師、リハビリ、介護士、管理栄養士、薬剤師等や行政によりプログラムを作成し4月より月1回研修会を実施した。参加者は延べ350人で認知症の支援に関心があるK市の地域住民に実施した。研修内容は認知症の理解、高齢者の栄養、口腔機能の向上、高齢者と薬の付き合い方、腰痛改善や筋力維持について、認知症の方とその家族とかかわり方、介護保険制度と社会資源についてなど多岐にわたったプログラムに沿って実施し認知症カフェ開設への支援方法について説明会を実施。1年間の研修終了後に郵送による質問紙調査を実施した。結果は有効回答数120名、有効回答率34.3%であった。平均年齢69.07±9.82歳、健康状態は9割の方が健康であった。1割弱は疾患や障害による身体症状があり健康でなかった。受講後にボランティア活動を始めた方は70.4%で、地域貢献を含めて84%が積極的に活動を行っていた。また現在の活動に79.2%が研修が役立ったとしていた。認知症支援への関連性について健康観との関連はなかったが女性が男性より有意に高かった。また社会活動を積極的に参加してネットワークをもっている人はどちらかといえば参加して持っている人より有意に高かった。以上の結果より、認知症カフェ開設等の認知症支援にむけては社会での様々な活動に参加してネットワークづくりが重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずやや遅れていると判断した理由として、今年度は認知症カフェでの専門職による介護支援獲得プログラムを実施することで家族介護者の介護力への関連を検証する予定であったが、生活圏域内での認知症カフェを運営するために認知症についての知識を有した地域住民の育成が不可欠であると考え認知症支援に関心のある地域住民に対して研修会を実施し、その後の意識調査をすることで1年を要した。認知症カフェを開設しても運営していなっかたり、認知症に対応できる専門職の配置がなく、実態調査が進まなかったことより、今年度は専門職による人材育成後に認知症支援への活動との関連を調査することが必要であると判断し1年間の認知症支援育成プログラムを試行し3月に追跡調査を実施した。その中で認知症支援の一環として認知症カフェを開催運営している2カ所に介入調査の予定であったが、コロナウイルス感染拡大のため、休止となり、翌年に持ち越しとなった。 しかしながらこの1年間の研修を通して新たなネットワークを作り専門職とも連携できる機会を持つことで、今後地域において認知症支援の一環である認知症カフェを開設・運営できるのではないかと考えられた。以上より新たに育成した地域住民による認知症カフェにおける専門職の介入による介護力獲得支援プログラムの検証までには今年度は至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は前年度に認知症支援育成プログラムに参加した地域住民による認知症カフェに看護師、保健師、リハビリ、介護士、管理栄養士、医師等の多職種により介護力獲得支援プログラムを用いて定期的に介入を行っていく。具体的には地域住民が主体となり認知症カフェを運営していく中で、運営者に対して専門職が相談役となり、効果的かつ継続的な運営が可能となるように支援する。地域住民による認知症カフェの運営は、運営側にとってもやりがいや生きがいとなり社会的意義をもたらすことになる。そこで専門職が地域住民とともに継続的支援として専門的知識のみならず常に専門職も生活者の立つ場となり家族介護者の悩みや相談に寄り添い、介護の肯定的側面に働きかけつつ専門機関につなげていく仕組みづくりを2021年度まで行う。専門的知識の提供としては介護の意味づけを促すなど、福祉職(社会福祉士・ケアマネ)は介護用品や福祉等の社会資源の効果的利用を促し、地域での健康活動や趣味が生かせる場の紹介などをおこなう。またPT,OTからは健康づくりの運動を実践し、栄養についても栄養士や歯科衛生士より介入を行う。これをモデルとして地域住民と多職種支援の役割りの特徴を示す“認知症カフェマップ”を作成し、その前後で家族介護者へのインタビューを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の旅費および人件費・謝金等、その他の直接経費133,593円が2020年度へ繰り越しとなった。繰越金となった理由として人件費・謝金では認知症支援育成プログラムでの専門職への講師謝礼金については研究分担者での実施となり研究協力者を雇用していたため低額、または生じない場合もあったためである。また3月の予定していた地域住民開設の認知症カフェへの継続的介入が困難であったため交通費とその他消耗品の購入ができなかったためである。また関係学術機関での発表は会場が九州県内で近隣であったため低額となった等が要因となった。使用計画として2019年度の繰越金は2020年度の人件費・謝金に約4万円、旅費に約7万円、その他に約2万円計上する。内訳として、認知症カフェでの介入協力のための専門職への人件費・謝金として計上し、旅費には関連学術機関での発表とインタビューのための交通費として計上する。その他については報告書の印刷費・郵送費に計上し、2019年度の直接経費を予定通り執行する計画である。
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