研究課題/領域番号 |
18K10590
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研究機関 | 健康科学大学 |
研究代表者 |
望月 宗一郎 健康科学大学, 看護学部, 教授 (30468227)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自殺予防 / 教育プログラム / 尺度開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学生がリスクやストレスに遭遇した際に自ら対処行動をとろうと意識し実際に行動に移せるようになる仕組みを創ることである。ときには自分の力だけではどうしようもできないことを自身が理解し、認め、対処行動の一つとして他者に助けを求める行動を起こせる力を育むことに焦点を当てている。 文献検討が不十分であったことから、2019年度は一部予定を変更して我が国における大学生の自殺予防における先行研究を概観し考察した。 1999年以降20年間の「大学生」と「自殺予防」を掛け合わせてヒットした43件の先行研究の結果を整理、分析した結果、竹谷らは、大学生の自殺と健康度との関係について報告しており、実施したアンケートをもとに、大学生に対する家族や身近な人の存在の大きさと働きかけが自殺予防に重要であることを示唆している。杉岡らによる報告では「自殺願望や自傷行為のある学生は一定数見られること、学生間で自殺や死にたい気持ちについて話題になり相談が行われることはまれではないこと、にもかかわらず、自殺予防に関する教育を受ける機会は乏しかった」とし、自殺予防に関する心理教育的アプローチを実践していくことを提言している。飯田は、自殺の社会構造的側面を大事にしながら、「自殺を考える本人の気持ちに焦点を当てていかない限り、本人が自殺ではない手段で自分の人生を主体的に歩むことなどできないのではないだろうか」と述べている。大学生が身近な誰かにSOSを発信できるか、それを他者が確実にキャッチできるかが重要である。大学生が「誰かに助けを求める力」を育むための効果的な教育プログラムを開発する必要性を再確認できた。 研究に並行し、実際の取り組みとして山梨県市川三郷町自殺対策計画の策定と、大学生に絞られてはいないが「児童・生徒に対するSOSの出し方に関する教育」の推進に関わることになったので、ここに申し添える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の関連文献が想定外に多く、予定を一部変更してその読み込みと整理に時間を費やした。文献の検討を丁寧に行ったことから、本研究における有用な示唆が得られた。これを次年度に活かすことができることを考えると、総合して順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、尺度に用いる内的整合性を検討し信頼性を確認したうえで、A県内5大学の5学科に在籍する500人(1学科100人を想定)に対しデータ収集 を行う予定である。想定している調査項目は、基本属性のほか、不安感、孤立感、自殺念慮の有無、今自分が置かれている状況を理解できるか、解決すべき課題に対し対処しようと思うか、誰かに助けを求めることができると思うか等である。 2020年度にはリスク対処認識尺度の構成概念妥当性を確認し、完成させる。その後、山梨県立精神保健福祉センター(山梨県自殺防止センター)と協働で、大学生に対し直接介入する中で試行的に教育プログラムを作成する。引き続き、当初の予定通りA県内大学生に対し自殺予防教育プログラムを実施し、評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2019年度に予定していた、約500人の質問紙調査を2020年度に繰り越したことにより、これにかかる経費が2020年度に回される結果となった。 2020年度には、当初予定通りの調査を実施する計画となっている。
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