本研究は、自殺の要因と考えられる解消すべきリスクやストレスに大学生が直面した際に「誰かに助けを求めることができる力」を認識させ、これを育むための効果的な教育プログラムを開発することを目的として進めてきた。その前提として、リスクに向き合う意識を測るためのリスク対処認識尺度の開発を試みた。尺度開発のための認識調査は、5つの大学の5学科に在籍する500人(1学科100人を想定)を対象に、無記名自記式質問紙郵送調査を行った。調査項目は、基本属性のほか首尾一貫感覚(SOC)をベースにした独自作成の調査項目を7件法で確認した。 380人(76.0%)から有効回答が得られ、探索的因子分析から次の4因子が得られた。すなわち、「負の感情をコントロールする」「意味を見出す」「状況を理解する」、そして「(困った)状況から抜け出せると認識する」である。 本研究を通じて、「助けを求めることができる力」の養成がいかに重要であるかがより明確となり、今後は教育プログラムの開発を引き続き進めていく。しかし、自殺は社会的要因と個人的要因の2つが影響した結果の現象であり、社会的要因に関していえば、個へのアプローチに併せて自殺対応に関する組織的体制整備を行っていく必要性があることも改めて明らかとなった。また、リスク要因が増加しないよう若年層が自分自身の強みと弱みを理解し対応できるようなプリベンション(一次予防)を重要視する必要があることを再認識することができた。
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