研究課題/領域番号 |
18K10592
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研究機関 | 日本赤十字豊田看護大学 |
研究代表者 |
清水 美代子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 講師 (80711168)
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研究分担者 |
真崎 直子 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 教授 (40548369)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 就労介護者 / 就労阻害要因 / 就労継続要因 / ワーク・ファミリー・コンフリクト |
研究実績の概要 |
研究の目的は、労働者のワーク・ファミリー・コンフリクト(以下WFC)、職場のソーシャルキャピタル(以下WSC)、健康関連QOLとの関連を明らかにすることである。先行研究において、就労介護者のWFCに影響する要因は明らかにされていない。そこで、高齢近親者の介護と仕事の両立に悩んだ就労介護者の語りから、就労阻害要因と就労継続要因を明らかにし、それらの要因を質問紙の項目に入れ、観察項目とすることを目的とした。 研究対象者は、介護を機に離転職した者及び就労継続者で、要介護1以上の被介護者の介護を6か月以上の経験者とした。愛知県内2市の居宅介護支援事業所と訪問看護ステーションに依頼をし、7か所から研究協力の同意が得られ、研究参加者12名のうち、主介護者8名の語りをデータとした。質的帰納的に分析した結果、就労阻害要因は12カテゴリー、就労継続要因は14カテゴリーが抽出された。【被介護者の認知機能の低下や医療的ケアなどの介護量の増加による負担増】【被介護者の異変の気づきの遅れに対する後悔】といった被介護者の健康状態、【自宅での介護と仕事を両立できるサービスの不足】が【介護者自身の家族生活を脅かす介護】につながり、【介護継続の予測ができない不安感やイライラ感が仕事の不調を招来】することや【勤続年数が短いことによる職場への気兼ね】が就労阻害要因として考えられた。 一方、【被介護者の病状の安定】や【介護者自身の健康への配慮】ができること、【仕事継続の後押しをしてくれる親族や家族と協力した介護の役割分担】【介護者の生活を中心に据えてサービスを上手く活用したできる範囲での介護】がある。職場としては、【介護者の健康や介護に配慮した勤務調整ができる職場の体制】【お互い様と言える職場のゆとり】【介護している仲間の存在】がある。そして、何より【仕事を辞めない意志の強さ】が就労継続要因として考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究倫理審査に合格するまで、3か月を要した。また、研究協力施設の同意は比較的早く得ることができたが、研究対象者があまりいないため、コンスタントにインタビューを進めることができなかった。また、インタビュー後の逐語録は、外注せず自身で行ったため、本務をしながらの作成でかなりの時間を要した。データ分析は、質的帰納的に行い、その項目を一旦は質問紙に反映させた。しかし、当初は就労介護者の仕事と介護を両立する上での困難・葛藤、対処・工夫の視点で分析していたため、仕事と介護の両立の概念を何で測るのかと指導教官より指摘があった。そこで、研究デザインから見直し、就労阻害要因、就労継続要因の視点で再度分析をやり直した。これらの理由から、研究の進捗状況としては遅れ気味になっている。
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今後の研究の推進方策 |
質的研究の再分析によって、質問紙の質問項目が明らかにできたため、先行研究の結果と併せて、質問紙を修正していく。この際、数名に質問に応えやすいか否かチェックしてもらう。プレテスト実施後、質問紙に修正を加え、質問項目を確定させる。そして、質問紙の印刷など準備を行い、研究協力の依頼を進める。また、質的研究の結果を論文にしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、質問紙を作成し調査を行う予定であったが、就労介護者に対象を絞り込んだため、予備研究を行うことになった。WFC研究においては、仕事と育児のWFCをみたものが多く、仕事と介護のWFCをみたものは少ない。また、就労介護者を対象にした研究も少ない。そこで、就労介護者を対象にしてインタビュー調査を行い、その分析の結果を質問紙に活かす必要性が生じた。研究計画書の作成、インタビューの実施、逐語録の作成、分析といったプロセスを経たため、1年で質問紙を完成させることができなかった。したがって、質問紙の用紙代、印刷代、封筒代等の経費がかからなかったため、次年度への繰越金が多くなった。 今年度は、質問紙を完成させるため、質問紙の用紙代、印刷代、封筒代に使用していく予定である。
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