わが国の薬物の問題は、「ダメ。ゼッタイ。」に象徴されるように、覚せい剤取締法や大麻取締法といった法律で規制・罰則を強化し、薬物の危険性や違法性を全面に出すことによって、薬物使用の未然防止を最大の課題としてきた。しかし、「薬物に手を出させない」ことを重要視する一方で、いったん、薬物依存の状態になった人への早期治療やリハビリテーションへの取り組みは遅れている。また、自らが治療につながりにくい薬物依存症者本人に代わり、家族が治療開始の重要なキーパーソンとして注目をされているが、薬物の問題は簡単に誰かに打ち明けたり、相談できるものではなく、薬物依存症者の家族に対する期待が大きければ大きいほど、家族の「言いづらさ」は行き場を失ってしまうという現状がある。 本研究は、そのような現状を背景に、薬物依存症者本人の回復に向けて、その家族が抱く「言いづらさ」を明らかにすることを目的としたものである。なお、2023年度はこれまでに実施したインタビューの分析と考察を行い、その結果の発表準備に向けた取り組みを行った。
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