研究実績の概要 |
本研究の目的は,母親のネット依存と子どもの発育・発達および母親の養育態度との関連を明らかにすることである。 初年度である平成30年度は,調査対象地域である島根県松江市で,平成28年度に実施された4か月,1歳6か月,3歳の各健診結果を,個人を特定できる情報を削除した状態でデータ入手し,解析を行った。 調査の結果,母親のネット依存の割合は,約1%であった。母親がネット依存の場合,4か月および1歳6か月の男児では痩せ傾向になることが示唆された。4か月は授乳期であり,1歳6か月は自立的に栄養を摂取することができないため,母親がネットに没頭して養育を疎かにし,子どもに十分な栄養を与えなくなることが,子どもの痩せにつながるメカニズムとして考えられる。この結果は,The 5th China Japan Korea Nursing Conferenceで発表すると共に,国際誌に投稿中である。 また,母親がネット依存の場合,そうでない母親と比較して,10倍から30倍近く虐待を認識している可能性が示唆された。その理由として,母親がネットに夢中になるあまり,養育が疎かになり,ネグレクト状態になることが考えられる。また,ネット依存状態にあると,養育のためにネット使用を中断されることがストレスとなり,虐待へと繋がる可能性が推察される。この結果は,第77回日本公衆衛生学会総会で発表すると共に,国際誌に投稿中である。 次年度以降は,上記の母親のネット依存と子どもの痩せ,母親のネット依存と虐待認識の関連に介在する可能性がある母子の情緒的絆(Bonding)に焦点をあて,母親のネット依存との関連を明らかにする。また,母親のネット依存と子どもの事故との関連を明らかにする。さらに,これらの関連の因果関係を明らかにするため,コホート研究を行う。
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