研究課題/領域番号 |
18K10619
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆子 順天堂大学, 医療看護学部, 客員教授 (10451741)
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研究分担者 |
雨宮 有子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (30279624)
石垣 和子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (80073089)
吉田 千文 常磐大学, その他部局等, 教授 (80258988)
島村 敦子 東邦大学, 健康科学部, 講師 (20583868)
辻村 真由子 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30514252)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 在宅療養の場 / 在宅ケア専門職 / ケアマネジメント / モラルディストレス / 対処行動 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで在宅療養の場でケアマネジメントを実践する多様な専門職(以下、在宅ケア専門職)が経験するモラルディストレス(以下MD)に着眼し、その構造の解明と対処を促進するための支援プログラム開発に取り組んできた。しかし2019年12月に確認されたCOVID-19蔓延のため、在宅ケア専門職はこれまで体験しなかった新たなMDを経験しているのではないかと考え、第1期調査として2020年1月~2021年2月に文献検討を行い、第2期調査として2021年末より、コロナ禍における在宅ケア専門職が経験するMDと対処方法を明らかにするため、在宅ケア専門職(訪問看護師、介護支援専門員)約16名に対し、Zoom等双方向性遠隔会議システムを利用した半構成的インタビューを行った。 その結果、在宅ケア専門職に「MDを引き起こした制度上の規制や制約」は、1.感染防御のための訪問看護・介護規制(8事例)、2.厳格な面会制限(2事例)、3.風評被害/差別(2事例)、4.厚労省の推奨訪問時間/遺体の死後処置(3事例)、5.入院先確保困難/指示系統混乱(3事例)、6.家に残された家族へのケアの体制がない(3事例)、7.行政・医療機関・専門職間の連携不足(4事例)があり、在宅ケア専門職の「MDへの対処」は、①リスクごと引き受け今自分ができることを行った、②都度保健所・行政・既知のサービス提供者に相談し問題提起を行った、③どうすることもできなかった、に整理された。 結論として、コロナ禍における在宅ケア専門職は、患者中心の倫理から公衆衛生倫理への迅速な移行を迫られ、個人および専門職の道徳的価値観や信念に反して行動することを余儀なくされ、MDを体験していたことが明らかとなった。コロナ陽性者に対するケアを実践している在宅ケア専門職へのメンタルヘルスを充実する必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年12月に確認されたCOVID-19感染症の蔓延は、研究フェーズを縮小させるのみならず、教育現場にも多大な影響を及ぼした。2020年秋ごろより感染症の蔓延が収まりをみせたため、Zoomを利用した研究会を開催し、文献レビューを実施した。しかし、2021年夏には第5波が、秋には第6波の感染拡大があり、対面あるいは双方向性遠隔会議システムを利用した半構造的インタビューについては、それらが収まりを見せた2021年末から2022年初頭に実施せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで積み上げてきた研究データを統括し、在宅療養の場で展開される専門職によるケアに潜む倫理的課題やモラルディストレス、及びそれらに対する対処行動について分析検討し、在宅ケア専門職一人ひとりが、自身の直面している状況、体験している感情・認識を自覚し、在宅ケア専門職として状況を乗り越えるための知の創出の機会としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度および2022年度に実施した聞き取り調査は、コロナ禍のためほとんどを双方向性遠隔会議システムで実施した。そのため、訪問面接調査のための交通費はほとんどかからなかった。また学術集会での発表についても、ハイブリット開催の学会が多く交通費がかからなかった。次年度は論文投稿を主に行う予定である。
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