研究課題/領域番号 |
18K10622
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
日下 さと美 (上村さと美) 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (30433618)
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研究分担者 |
高橋 哲也 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (00461179)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 災害看護 / リハビリテーション / 地域医療 |
研究実績の概要 |
本研究は高齢者が必要量の水を少ない疲労で持ち運びができる形状を備えた非常用応急給水袋(以下、給水袋)とウォータータンクを改良・開発することである。 地域在住前期高齢者37名(男性4名、女性33名)に一般市販されている最小容量(3L)の給水袋を3種の持ち方(手提げ、背負い、肩掛け)で室内廊下516mを運搬させて、運動強度と疲労を確認した。測定項目は呼気ガス諸量、血圧、歩行時間、体幹動揺、自覚的運動強度とした。分析は運動強度として代謝当量を算出し、心負荷はダブルプロダクト、疲労は歩行速度と体幹動揺総軌跡長などから検討した。また各運搬後には、給水袋の改良希望点の聞きとりを実施した。 結果は体幹動揺を測定した女性26名(平均年齢70.4[67-74]歳)では手提げ、背負い、肩掛けの持ち方では運動強度は各々5.3±0.8METs、5.1±0.9METs、5.2±1.0METsであり、歩行速度は各々1.3±0.3m/s、1.3±0.1m/s、1.4±0.2m/sであった。ダブルプロダクト(×10の3乗)は19.5±4.8、19.8±5.5、19.1±5.0であった。いずれも距離と持ち方による交互作用はなく距離による主効果を認めた(p<0.05)。体幹動揺総軌跡長は、歩行終了直前では背負いと肩掛けで仙骨レベルの水平面総軌跡長に歩行開始直後よりも有意な拡大を認めた(p<0.05)。 以上から前期高齢女性が3Lの給水袋を運搬した場合には、持ち方の違いによらず中等度の運動強度となり、持ち方の違いが心血管系への負担や歩行速度に影響することはなかった。一方、体幹動揺では給水袋を背負いと肩掛けで運搬すると歩行距離の増大に伴い仙骨レベルの動揺が拡大していたことは、体幹全体が回旋していることを示し、上肢の振りも関係しているところまでは明らかとなった。 今後は水の動揺が心負荷や歩行効率に与える影響を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では平成30年は給水袋の持ち方(手提げ、背負い)と容器の大きさの違い(3L/6L/10L)が身体的疲労と歩行効率に与える影響を検討することであった。しかしながら多くの高齢者が体力に応じた水容量を選択できるようにするためには、最小容量である3Lの給水袋を基準として身体的疲労や歩行効率を明らかにする必要があり、計画を修正した。また持ち方には肩掛けを追加した。これは高齢者が日常の買い物や出かける際にはショッピングバックなどを肩から掛けて運搬することも多いことから、慣れた運搬方法も選択できるように設定した。また女性のほうが男性よりも健康寿命が延伸していることから、女性が給水袋を運搬した場合の運動強度をより明らかにしていくように計画を修正した。 以上から当初の計画よりも高齢者、とくに女性高齢者が体力に応じて水容量を選択できる目安が明らかになったほか、運搬する場合には路面の状態にもよるが日常持ちなれた方法も手段の一つであることを助言できるようになったため、おおむね順調に進展していると判断している。 なお、現在、論文投稿にむけて準備中であるほか、関連学会にて発表確定または登録中である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、 1.異なる容量の給水袋(容量3L、6L、10L)に3Lの水を注水して手提げと背負いで運搬したときの心負荷を測定する(予定被検者数は、各持ち方につき各々15名)。 2.形状の異なる容器(給水袋、ウォータータンク)に3Lの水を注水して運搬したときの呼吸循環動態を測定する(予定被検者数15名)。 3.1と2から疲労の程度が少ない給水袋の容量と運搬容器について明らかにする。 4.給水袋とウォータータンクの改良・開発の要点を明らかにして試作案の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況に遅れはないが論文ならびに学会報告は作成・登録中であり、結果として次年度使用額が生じた。この未使用額は2019年度予算と合わせて論文投稿費用に支出する予定である。 2019年度は謝礼として225,000円[被験者45名×3,000円/1名(合計135,000円)、測定補助者(2名/1名被検者)は1名あたり1,000円(合計90,000円)]を予定している。旅費は111,000円として第25回日本心臓リハビリテーション学会ならびに現在、登録中の学会への参加費、旅費として予定している。その他、給水袋やウォータータンク、電極などの消耗品の購入と2020年度に試作する給水袋の改良・開発にむけた給水袋の案を作成するための材料を購入する予定である。
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