研究課題/領域番号 |
18K10622
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
日下 さと美 (上村さと美) 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (30433618)
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研究分担者 |
高橋 哲也 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (00461179)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害への備え / 地域医療 / 高齢者看護 |
研究実績の概要 |
本研究は災害による長期断水の発生を想定して、高齢者が水を運搬する場合にいかに疲労を少なくして運搬できるか、そのための給水袋などの開発を目的に進めている。 進捗状況は、一般市販されている給水袋の運搬様式(背負い式、手提げ式、肩掛け式)と主なる容量(3L、6L、10L)に注目して、3Lの水を運動習慣のある女性前期高齢者を対象に運搬した場合の疲労の程度を測定した。結果、疲労の強さはエネルギー消費量ならびに心拍数からみると中等度からやや強度に到達していた。さらに背負い式では3Lの水を大きさの異なる容量の給水袋に注水すると、袋の中で水が揺れ動くため水と運搬距離の相乗効果によって疲労の程度が変動することが明らかとなった。なお、3Lの水の設定背景は備蓄が推奨されている1日あたりの水量と応急給水の目標量が「3L」である。 本年度は運搬時に水の揺れの影響を受けにくい給水袋または運搬具の開発を進めるために前年度までに測定した被験者から聞き取った運搬時の身体の疲労部位や感想、改良希望の箇所のインタビューを整理し、試作品の改良を進めた。そのほか東京23区や水道局の防災パンフレット等を調査し、水の備蓄や災害時の水確保に関する情報記載の内容を抽出した。結果、パンフレット等にはペットボトルのローリングストックや給水袋が掲載された備蓄用品の購入先などの情報は掲載されていたが、高齢者がどのような観点で給水袋の運搬様式や容量を選択すればよいのかなどの情報提供の記載は散見されなかった(東京23区を対象としたのは災害発生時には道路や住宅事情から「徒歩での運搬」が求められるためである)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受けた。本研究の対象者が高齢者であることから予定していた測定を全面中止した。さらに感染症対策による不要不急の外出を控えることへの協力は、被験者の体力の低下が十分に推察された。そのため測定時に万が一、急変が生じた場合は医療機関への搬送も困難であるため、運動負荷を伴う測定の全面中止を継続して現在に至る。 しかしながら2019年度までの測定結果ならびに2020年度中に発生した自然災害による断水状況の情報から計画を変更し、情報発信を主体として進めていくこととした。やや遅れている理由は情報発信物を作成するにあたり、最終発信物については高齢者の意見もとりいれる予定であり、新型コロナウイルス感染症の状況から感染予防のための対策をとりながら、どのように進めていくか検討中であるためである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるため、以下を進める。 1. 断水時に応急給水拠点を利用する可能性のある高齢者にむけた情報発信として、①1日に必要とされる水容量3Lを運搬する場合の疲労の程度を知ってもらう、②事前に自宅等から給水拠点までの運搬経路と距離、運搬予定の水容量を運搬する機会を設けることをとりいれた情報発信物の作成と発信を行う。 2. 給水袋などの水運搬具を開発する企業などに高齢者が3Lの水を運搬した場合の疲労の程度や身体の疲労部位と改良の要望を共有できる情報発信物の作成を行う。 例:手提げ式給水袋であれば指を通す穴の数や形状の要望 3. 医学系学会での発表ならびに論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2021年3月から4月に予定していた測定の被験者ならびに測定補助者への謝礼および消耗品費の未使用、および学会への参加費の支出がなかったことによる。 次年度は情報発信物を作成するにあたり分かりやすいデザイン(図表やイラスト、写真、文字などの工夫)を作成する。また日本心臓病学会、日本心不全学会、日本災害看護学会への演題登録を行っているため学会参加費ならびに論文投稿費用として使用する。
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