研究課題/領域番号 |
18K10655
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山内 典子 東京女子医科大学, 看護学部, 臨床講師 (10517436)
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研究分担者 |
田中 美恵子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10171802)
小泉 雅子 東京女子医科大学, 看護学部, 准教授 (20727606)
安田 妙子 東京女子医科大学, 看護学部, 臨床講師 (50382429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | せん妄 / 患者 / 看護師 / ケア |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画書に基づき、研究施設の一般病棟、集中治療室(小児科と産科を除く)において入院中のせん妄と判断された患者7名とその患者のケアに携わる看護師24名に対して、ケアの場面を参加観察し、その後にインタビューも併せて行った。 参加観察では、患者と看護師が直接関わる場面に参加して、研究者も一緒にケアを行った。この際、研究者と患者がやりとりする場面もデータとして扱った。 患者に対する面接では、せん妄が改善した後に「インタビューガイド」を用いて「せん妄をどのように経験していたか」や「周囲の他者からの印象的な関わりをどのように感じていたか」についての思いや経験をできるだけ自由に語ってもらった。ただし、患者はせん妄時には、意識障害を伴っており、面接に応じることは難しいと考え、面接は、せん妄から回復した後に設定した。時期は、より鮮明にせん妄の記憶が残っていると考えられる、せん妄から回復して3日~10日の間、かつ、患者の心身の状態が落ち着き、担当医師および病棟管理者、看護師により面接が可能と判断された時に、患者の意思を尊重したうえで行った。面接に際しては、希望を尊重したうえで、病棟内の病室または別室で行い、内容は研究参加者の了承が得られた場合にICレコーダーに録音し、逐語録を作成し、データとした。 看護師に対する面接では、せん妄患者への継続的な関わりを通して「患者に対して気づいたこと、感じたこと、思うこと」「患者との会話ややり取りの内容」「患者が経験していることをどのようにとらえてきたか」について、できるだけ自由に語ってもらった。 参加観察した内容はフィールドノーツに記述し、面接で得られた内容は逐語録として残し、さらにそれらを事例ごとにまとめてテクストを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より、平成30年度課題を「フィールドの確保、研究参加者の選定およびデータ収集」としていた。4月に所属する倫理委員会の承認を得た後より、データ収集施設への研究の説明および協力の依頼、同意確認を行った。その後、フィールドに入り、ケア場面に参加して観察したことをフィールドノーツに記述した。また、ケア後や患者がせん妄から回復した後に、そのときの状況についてインタビューした。データ収集後は、参加観察場面を記述したフィールドノーツと面接により得られた語りの逐語録について、事例ごとに合体し、テクストを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、データ分析を行う予定である。本研究においては、せん妄患者と患者をケアする看護師の生きられたままの経験に対してより直接的に触れることを課題にテーマ分析を用いる。ここでは、患者と看護師のあいだに生じるケアの成り立ちについて、現象学的反省によりテーマを導き出し、その出来事を成り立たせている構造について提示する。 まず、フィールドノーツと面接の逐語録をまとめたテクストから、現象学的記述に対して働きかけるデータ、素材をまとめた1事例ごとのテクストを作成する。この際、出来事がそれ自体の中に持ち込む論点あるいは説得力に関して、鋭敏な感覚を研ぎ澄ますことが重要とされる。作成されたテクストを繰り返し熟読し、また、データに遡りながら書き直し、以下の手順で解釈して現象学的記述を行い、せん妄患者と看護師のあいだで成り立つケアの意味の構造を明確化する。 信用性・妥当性の確保については、各々の経験、あいだに生じているケアがゆがめられないように、また恣意的な解釈とならないように、自身の感覚に真に迫るものであるかどうかについて、繰り返しテーマを吟味する。これは、指導者にスーパーバイズを受けるとともに、本研究に関連する先行研究や現象学者の著書に触れたり、ゼミやセミナー等を活用し、その伝統に自らも参与することにより、できるだけ多くの洞察を得ながら進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初パソコンを購入する予定であったが、データ収集上、1台で済んだことが挙げられる。今後、分析を進めていく上では、不足する可能性があり、次年度に持ち越している。
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