本研究は、東南アジアに位置するラオスを調査フィールドにした腸管寄生虫症の再感染防止を目指したデジタル型健康教育に関する介入研究であった。2018年の研究開始から、フィールドの選定、現地機関との調整、準備を行い、2020年より、介入を開始する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、現地への渡航ができず、足止めとなっていた。最終年度となった2023年3月に渡航が可能となり、介入研究に至らないまでも、ヒアリングを行うことができた。ただし、計画していた腸管寄生虫症に関する内容ではなく、新型コロナウイルス感染症に関する内容に変更して、現地でのヒアリング調査を行った。 ラオスは、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクに伴い、ロックダウンも含めた対策を行ってきたが、その感染症対策に関する情報は、都市部と村落での人々の情報収集の手段が違っていることが明らかとなった。感染者数、ワクチン接種、予防方法に関する情報を都市部では、FacebookなどのSNSから入手していた。一方、農村部では、スマートフォン所有者であっても、公的機関から村長におりてくる内容や、口コミにより情報収集を行い、対策を講じている状況が明らかとなった。 スマートフォンの普及により、都市部と村落部で同様にデジタル化が進んでいるにも関わらず、その活用方法、情報へのアクセス、情報収集方法については、明らかに差異があった。今後も、感染対策や健康教育の必要性が高い農村部においては、意図的な情報発信、必要な情報にアクセスできる仕組みが必須であることが示唆された。
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