研究課題/領域番号 |
18K10667
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
立谷 大介 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (20814263)
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研究分担者 |
市川 博之 東北大学, 歯学研究科, 教授 (20193435)
佐藤 匡 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40637964)
矢島 健大 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40779550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動障害 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、遺伝子異常による運動障害が摂食嚥下にどのように影響するかを、ミュータントマウスを用いて明らかにし、その障害を改善する方法を探索する目的で行われている。摂食嚥下は、三叉神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経による感覚と運動の情報伝達及び調節により行われる。食物を口腔で咀嚼し、食塊を形成してから咽頭に移動させるまでの時期を食物摂取の咀嚼期と呼ぶが、この咀嚼期における口腔粘膜へのさまざまな刺激に対する感覚が延髄や橋を含む脳に伝達され、次なる咽頭や軟口蓋、或いは喉頭蓋の運動へと連続する。今年度においては、この口腔粘膜の感覚を伝える三叉神経節に対するSMN遺伝子異常の影響について明らかにした。今年度は、ワイルドタイプマウスとSMNマウスの三叉神経節の感覚ニューロンの細胞体の数や大きさについて明らかにした。肉眼的にはワイルドタイプマウスに比べSMNマウスの三叉神経節は幅・厚さ・長さともに小さかった。それを反映するようにニッスル染色を施した切片で推定したSMNマウスの三叉神経節ニューロンの総数は大きく減少していた。SMNマウスの三叉神経節では約30%の感覚ニューロンが減少し、統計学的な有意差も示された。またワイルドタイプマウスの三叉神経節には小型から大型まで様々な大きさのニューロンが含まれていた。特に小型から中型のニューロンが豊富に観察された。一方、SMNマウスの三叉神経節では大型のニューロンが明らかに減少していた。一方、この所見から、SMNマウスでは三叉神経節の大型の感覚ニューロンに変性が生じている可能性が示唆された。したがって、SMNの遺伝子異常では、摂食・嚥下に関わる感覚ニューロンに変性が生じ、口腔粘膜における触覚・圧覚・振動覚などの伝達が障害され、摂食困難や嚥下障害をもたらすと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、運動障害を示すSMNマウスにおける口腔感覚障害を明らかにするため、ワイルドタイプマウスとSMNマウスの三叉神経節ニューロンの数や形態を詳細に分析した。その結果、肉眼的に予見されたSMNマウスにおける三叉神経節ニューロン数の減少が統計学的にも証明された。このことから三叉神経節ニューロンの減少が摂食・嚥下の困難をもたらしているという可能性が示唆される。また、このような所見は現在までに報告されたことがなく、今後の本研究課題においてSMNマウスの三叉神経節を詳細に分析し、摂食や嚥下障害との関連性を明らかにするという新たな方向性を見出すことができた。したがって、本研究課題は現在までに、おおむね順調に進捗していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究では、SMN遺伝子の異常により摂食・嚥下に関わる感覚情報を伝達する三叉神経節の大きさが減少していることを明らかにした。さらに三叉神経節の切片にニッスル染色を施して分析することにより感覚ニューロンの総数も大きく減少していることも明らかにした。そして特に触覚・圧覚・振動覚などの伝達する大型ニューロンの減少が顕著であるという結果も得られた。三叉神経節の感覚ニューロンにおける様々なセンサーが摂食や嚥下に関連しているため、これらのセンサーについて詳細に検討する予定である。次年度においては、ワイルドタイプマウスとSMNマウスの三叉神経節感覚ニューロにおける刺激に対するセンサー(TRPV1、TRPM8, TRPV3、TRPV4)の分布変化を三叉神経節のみならず、舌や口蓋などの口腔粘膜についても比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね研究計画が順調に進んだが、一部の試薬が次年度へ繰り越されることとなった。そのことにより、次年度使用額が発生した。 次年度の予算と合わせて執行予定である。
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