研究課題
【はじめに】日本は超高齢化社会をむかえて、摂食嚥下障害の患者が益々増加すると考えられる。その評価方法として、嚥下造影検査 (Video fluorography, VF)は嚥下関連器官の形態および液体・食物の同器官での動態などを同時に診断できることから、摂食嚥下機能の評価法として、現在、最も信頼性が高く、有益な検査となっている。しかし、高額な器機、造影剤による誤嚥性肺炎、検者・被験者の放射線被曝等の問題点がある。そこで、我々は、非侵襲的にベッドサイドで実施できる嚥下機能評価方法として、ピエゾフィルム(圧電素子)を頸部の皮膚に装着して,頸部の振動から嚥下機能を評価する方法(以下本法と記す)を考案し、すでに2015年に英文雑誌「Dysphagia」に報告した。 【目的】すでに報告した健常者の嚥下の際の舌骨移動時間の基準値をもとに、嚥下障害の病態(脳卒中、廃用症候群、開胸・開腹術後等)における舌骨移動時間 の診断値の作成、さらに嚥下リハの際の治療評価への応用を目的としている。 さらに嚥下障害者の地域でのスムーズな診療を行うため、嚥下リハの地域連携システムの構築をまずは新潟市のみで試行し、その後に新潟県全体の嚥下リハのスクリーニングが可能な施設情報、連携の際のパスウエイ(紹介ツール)、連携システム確立を目指す。このための連携の会として「新潟摂食嚥下ネットワーク懇談会」を発足し、活動をすすめており、その詳細は後に示す。
4: 遅れている
ピエゾセンサーを用いた摂食・嚥下機能評価の疾患群(脳卒中、廃用症候群、開胸・開腹術後等)に対する応用に関しては、診療システムの整備及び、研究者の確保がまだ、不十分のため進んでいない。 しかしながら、摂食嚥下障害患者に対する地域連携システムの構築に関する研究に関しては進行している。研究協力者の張替徹による秋葉区における摂食嚥下機能評価・指導システムの構築と効果に関しては論文として、すでに報告している。 また、にいがた摂食嚥下ネットワーク第1回交流集会を2019年3月17日(日)に開催し、あきは食のサポートチーム、江南区摂食嚥下と口腔ケアを考える会、 燕弥彦西蒲食支援ネットワーク、新潟エッセン、にいがた地域食支援ネット、にいがた西地区食と栄養サポートネット(INSネット)、新潟高齢者の栄養と摂食を支える会、Everyday食べる会などの発表を聴講し、意見交換を行った。 連携の会として「新潟摂食嚥下ネットワーク懇談会」を発足し、2019年10月28日にワーキングメンバーによる発足会、第1回会議を2019年12月12日に行った。 第2回会議を2020年2月6日に行い、(1)摂食嚥下共通情報様式検討グループ(むすびあい手帳の利用方法も含めて)、(2)嚥下調整食共通様式検討グループ、(3)摂食嚥下診療機能に関する医療機関データベース作成・ネット公開方法検討グループに分かれて、各班での話合い等をメイリングやzoom会議等ですすめた。結果として、(1)班として、新潟嚥下手帳を完成し、現在印刷中、(2)班の成果を新潟嚥下手帳に盛り込み、(3)班は各医療機関に摂食・嚥下機能の検査、及び診療体制の状況を調査すべく、アンケートを実施中である。
今後は、患者群(脳卒中20名、肺炎後の廃用症候群20名、開胸・開腹患者20名)を対象とした機能評価を行うための、摂食嚥下機能回復部との診療システムの整備を行う。また、摂食嚥下障害患者に対する地域連携システムの構築に関して、新潟摂食嚥下ネットワーク懇談会で作成した新潟嚥下手帳を実際に新潟市で使用しているむすびあい手帳の中にいれ、使用していただく。さらに摂食・嚥下機能の検査、及び診療体制の状況の調査をもとに、嚥下調整食の統一化、新潟市での連携システムのインターネットを用いた公表等をおこなっていく予定である。
人件費として執行予定。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
新潟県作業療法士会学術誌
巻: 14 ページ: 17-26
新潟医学会雑誌
巻: 133 ページ: 215-219
Journal of Clinical Medicine Research
巻: 11 ページ: 834-841
10.14740/jocmr4027. Epub 2019 Nov 24.