研究課題/領域番号 |
18K10673
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
砂川 融 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (40335675)
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研究分担者 |
小池 康晴 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10302978)
車谷 洋 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (00335647)
中西 一義 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (60403557)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 利き手 / 運動学 / 経頭蓋直流電機刺激 / 運動シナジー解析 / 筋シナジー解析 / 感覚障害 |
研究実績の概要 |
1. 手の感覚に及ぼすtDCSの影響に関する研究:正常群に対する結果は論文が採択され,人工的感覚障害に対する影響については論文投稿中である. 2. 筋・運動シナジー解析:利き手の違いが到達運動課題中の上肢運動協調パターンに及ぼす影響について健常人を対象に解析した.同じ利き手内で利き手と非利き手でパターンに有意な差はなく,利き手の違いでも明らかな差を認めなかった.上肢のリハビリテーションにおいて,健側の運動を患側に応用,あるいは参考とすることに明らかな問題がないことが判明した.シナジー解析から抽出した運動パターンを実施することは新規運動課題獲得に有効か否かを手掌内球回し課題で検討した.単純な手指運動訓練を行うより,シナジー解析から抽出した訓練を行う方が球回しパフィオーマンスが有意に向上することが判明し,特定の手の運動機能を獲得あるいは向上させるためにはシナジー解析に基づいたリハビリテーション課題を実施すべきことが判明した.手根管症候群患者と母指CM関節症患者を対象に母指の分回し運動課題を行わせ,三次元動作解析から各関節の運動シナジーを抽出し,正常群と比較検討した.その結果,手根管症候群患者では,CM関節の伸展,外転方向の運動の減少とMP関節の代償動作が抽出され,CM関節症患者ではシナジーに有意な差はないが,運動範囲が全方向で減少していることが判明した. 3. 筋電図学的解析:筋肉内留置可能電極を使用し上腕二頭筋と上腕筋の役割の違いについて肘屈曲伸展課題を行い検討した.その結果,上腕二頭筋は運動初期と最終域で主に活動し,上腕筋は屈曲トルクの増大に依存して活動していること,低負荷高速度運動では主に上腕二頭筋が活動しており,2つの肘屈筋には明らかに役割の違いが存在しており,機能再建,あるいはリハビリテーションではそれを考慮する必要であることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 筋・運動シナジー解析:三次元動作解析と,筋電図学的解析を併用したシナジー解析の方法が確立できている. 2. 筋電図学的解析:手法は概ね確立できたが,定量的課題の確率が不十分である. 3. 手の感覚に及ぼすtDCSの影響に関する研究:患者群を対象とした研究が行えていない. 4. 上肢機能障害患者群を対象とした運動イメージ訓練の効果の検討が進行中であるが,症例数がまだ不足しており訓練そのものの効果や利き手と非利き手での効果の違いについて結論を出すに至っていない. 以上より,研究は進行しているが,不十分な点があるため,やや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
1. 手の感覚に及ぼすtDCSの影響に関する研究:手根管症候群患者を対象に研究を行う予定であるが,施設倫理委員会の承認を得るのに手間取っている. 2. 筋・運動シナジー解析:これまでのデータの蓄積をもとに研究を追加し,利き手の違いによる影響を継続調査予定である.特にこれまで手関節より末梢のみが調査対象であったため解析システムを追加構築し,上肢全体の解析を行うよう準備している. 3. 筋電図学的解析:対象者の追加と,対象運動の範囲を広げて追加実験予定である. 医学研究倫理指針の改定により倫理委員会の審査が煩雑となり,承認を得るのに多大な時間を要している.また,昨今の新型コロナ感染症の影響で人員の移動と研究施設の使用が制限されているため,研究の進行に大いに不確定な要素はあるが,可能な限り研究推進予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張旅費として使用予定であったが,新型コロナ肺炎の関係で学会が中止となったため使用できなかった.次年度出張旅費,消耗品,実験協力者謝金および論文作成費として使用予定.
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