研究実績の概要 |
足部外側靱帯群の1つである踵腓靱帯は、長・短腓骨筋腱の深層を横切って走行する。この解剖学的位置関係から、足関節の運動に伴って緊張した踵腓靱帯が腓骨筋腱を体表面方向へリフトアップすることで、腓骨筋群の収縮を補助するテンショナーとして機能している可能性を着想し、本研究では解剖体と非接触型3Dスキャナーを用いた機能解剖学的検討を実施してきた。 研究遂行上のネックは、計測肢位(踵腓靱帯が緊張し、かつ腓骨筋腱の過伸展の影響がない)と腓骨筋腱上に設置するマーカーの材質・形状であったが、2年間にわたる検討の末これらを解決し、13体の解剖体から作製した26肢のサンプルについて特注治具に固定した状態でスキャンを実施した。また、踵腓靱帯の踵骨付着端を切離した状態におけるスキャンを対照実験とした。得られたデータをx, y, z軸を設定した仮想空間で3Dモデル化し、腓骨筋腱上のマーカーの位置移動を解析したところ、リフトアップの方向に相当するy軸上の移動距離について統計学的な有意差が見出され、実際の移動距離は長腓骨筋腱が2.0±0.8mm(最大3.5mm)、短腓骨筋腱が1.9±1.0mm(最大3.8mm)と算出された。 これらの結果は、踵腓靱帯が腓骨筋腱のテンショナーとして実際に機能していることを強く示唆し、特に足関節・足部の不安定性を有する患者において、長・短腓骨筋をターゲットとする効率的なリハビリテーションプログラムの開発などの臨床応用につながることが期待される。なお、本研究成果は、”Calcaneofibular ligament works as a tensioner of the peroneal tendons: a cadaveric study using a three-dimensional contactless scanner”のタイトルで投稿準備中である。
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