R3年度が最終年度であったが、論文執筆に時間がかかり、研究期間の延長を申請した。 低酸素・低グルコース(OGD)による神経軸索内ミトコンドリアの動態解析を行った。その結果、OGD暴露1時間後に輸送ミトコンドリアの数が優位に減少し、その後、停留ミトコンドリアの長さが短くなった。停留ミトコンドリアの長さが短くなった原因としては、①輸送ミトコンドリアの軸索内での停止、②停留ミトコンドリアの分裂(fusion)、③停留ミトコンドリア自体の長さの短縮がみられた。 電子顕微鏡による観察では球状ミトコンドリアの数が優位に増加しているのが観察された。 これらの結果より、OGDの暴露は神経軸索内のミトコンドリアの輸送を阻害し、加えてミトコンドリアの分裂および停留ミトコンドリア自身の短縮を誘導することにより、本来、筒状の軸索内ミトコンドリアを球状にすることが分かった。また、これらの現象はアポトーシスやネクローシス、軸索変性などが観察される前に観察された。 これらの事より、OGDにより誘導される軸索内ミトコンドリアの変化は、神経細胞死に先立って観察されることが明らかとなり、末梢循環障害などによる神経細胞変性の治療ターゲットとして、ミトコンドリアが関与する可能性が示唆された。
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