研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナ感染拡大によりデータ収集ができなかったため、昨年までのデータの処理と論文作成を行った。 目的:バランス機能は転倒あるいは障壁回避に関する時系列の観点から、予期的制御、予測的制御、応答的制御に区分される。歩行中の方向転換課題における予期的制御について焦点をあて、矢印ランプによる方向指示に対する頭部定位反応時間とMMSE及びバラス機能評価の関連性について検討した。方法:対象は、認知症者12名である。動作課題は10m歩行路において、4~5m程度の定常歩行後、方向指示刺激装置により矢印ランプで転換方向を提示し、その方向にできるだけ早く左もしくは右へ90°方向転換することとした。方向提示のタイミングは被験者の足底に貼付したフットスイッチからアトランダムに導出した。矢印ランプ提示から頭部が転換方向へ回旋し始めるまでの頭部定位反応時間を計測した。反応時間は、頭部に加速度計を装着し、転換方向指示からの潜時を計測した。対照計測項目として、MMSE、歩行速度、Berg Balance Scale(BBS)、Timed up and Go test(TUG)を計測した。結果:各計測項目の平均値及びSDは、頭部定位反応時間:521.7±88.0msec、MMSE:22.8±4.8、歩行速度:0.9±0.2m/s、BBS:47.2±4.2点、TUG:14.1±3.3secであった。各計測項目間の相関については、反応時間とMMSE(r=-0.73, p<0.01)、反応時間とTUG(r=0.58, p<0.05)に有意差が認められた。一方反応時間と歩行速度、BBSには相関が認められなかった。結論:方向転換指示に対する頭部定位反応時間と認知機能及び二重課題遂行機能との関連性が示唆された。
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