研究実績の概要 |
本課題の目的は、人工内耳装着者に音響情報を最も伝えやすくする電気刺激波形を見出すことである。これまで、聴神経を適切に制御する電気刺激の候補として、パルスレートと振幅が同時に変調された双極二相性パルス状波形を提案している。しかしながら、現段階では最適な条件を見出せるまでに至っていない。令和3年度は、令和2年度での成果を踏まえて、引き続き、電気刺激の消費電力、エネルギー節約の観点からパルス状刺激波形のパルスレートやパルス振幅を最小値に制限するべく、von Mises型自己励起不規則点過程によるスパイク列モデリングに基づく電気刺激波形の評価法を用いて、パルスレート・振幅同時変調のパルス状電気刺激のパルスレートと神経スパイク列への情報エンコーディングの性質を表す統計量(発火レート、ベクトル強度)との関係を調査した。具体的には、正弦波によってパルス状刺激波形のパルスレートと振幅の両者を様々な変調度、とりわけ深い振幅変調度で変調されたパルス状電気刺激を聴神経線維モデルに与えた時のスパイク応答について調査を進めた。その結果、ある特定のパルスレート変動幅において、より深い振幅変調度が適切な発火レートと、より高いベクトル強度をもたらすことが見出された。このことは、消費電流を抑えながらも、パルスレート・振幅同時変調方式が音響情報を人工内耳装着者により良く伝送できるであろうことを示唆する。これらの知見を、対面(Los Angeles Convention Center, CA, USA)とvirtual(zoom)のハイブリッド形式で開催されたSociety for Brain Mapping & Therapeutics 17th/18th Annual Congressにおいて招待講演として口頭発表した。
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