研究実績の概要 |
失語症者に経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)を実施すると言語機能が改善し注意・遂行機能を把握しやすくなるか検証する目的で、最終年度も患者を追加し、合計で12名(全例男性)に実施した。無作為にA群(左前頭葉と左側頭葉刺激)7名、B群(左前頭葉と右頭頂葉刺激)5名の2群に割り付け、40分の言語訓練の初めの20分間にtDCSを連続3日間実施した。 結果は、全例で介入前後の比較では、Auditory Detection正答率で介入前52.6±25.3, 介入後65.4±24.9(p<0.05, n=10)で、介入後に有意に改善した。また、有意な傾向だが、Position Stroop Test正答率が改善し, HondaDSの反応時間の標準偏差(反応のばらつき)が減少した。2群での比較では、Visual Cancellation Task[か]正答率がA群0.83±3.53, B群-3.76±3.10(p<005)と有意差を認めた。他は有意差はなかった。介入前後で成績が改善した結果からは、言語の要素を含む検査であり、多少の効果はあったと考えられる。2群の比較では、A群で仮名の判別力が有意に良かったが、その他は有意差なく明確な結果とは言えなかった。 全期間を通して、失語症者の運転評価の際に、利用できる検査としては、Trail Making Test(TMT) Part-A、Reyの複雑図形模写、標準注意検査法(CAT)のTapping Span、Visual Cancellation Task(VCT)図形A・B所要時間、 Continuous Performance Test(CPT)反応時間が挙げられた。結果の判断に迷う場合は、TMT-AとCPT AX課題の結果により注目すべきと考えられた。
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