研究実績の概要 |
温熱負荷(thermal stimulation,TS)の受容には,温度感受性をもつtransient receptor potential(TRP)チャネルが関与する。TRP vanilloid 4(TRPV4)は, 皮膚や腎臓に高発現し,TSやシェアストレスにより活性化され,血管拡張に関与する。本研究ではTS時の腎局所循環調節におけるTRPV4の関与を明らかにすることを目的とした。 C3H/He雄性マウスを対象に,TRPV4阻害下での腎皮質血流量および心拍数,収縮期血圧を測定した。群分けは,control群,TRPV4阻害薬を投与した(HC067)群,TSを実施した(TS)群,TRPV4阻害薬を投与したうえでTSを実施した(TS+HC067)群の計4群に分けた。TSは,約20分かけて直腸温が37℃または40℃に至るまで行い,20分間保温した。次にβ受容体遮断薬を投与したうえでTS時の腎皮質血流量を測定した。TSを実施した(TS)群または,TS+carteolol群に分けて実験を行った。各薬剤は実験開始1時間前に投与した。 腎皮質血流量の増加は,TS群に比してTS+HC067群で抑制された(TS群:1.53±0.13倍,TS+HC067群:1.26±0.06倍)。心拍数は,TS群に比してTS+HC067群で有意な低値であったが,収縮期血圧は,有意な高値を示した。TS+carteolol群では,TS群に比して腎皮質血流量の増加が抑制され(TS群:1.57±0.12倍, TS+carteolol群:1.35±0.07倍),心拍数および収縮期血圧は,有意な低値を示した(p < 0.01)。二重積は,TS群とTS+HC067群で差は認められなかったが,TS+carteolol群では,TS群に比して有意に低下した。
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