大脳基底核の一部である線条体は虚血に脆弱で、影響を受けやすく梗塞を起こしやすい部位である。線条体は脳梗塞の中でも中大脳動脈アテローム血栓性梗塞や多数のラクナ梗塞(微小梗塞)を引き起こす部位であり、それら血管障害の後遺症として認知障害や歩行障害などの運動障害や脳血管性パーキソニズムなどを発症する。それら後遺症のリハビリは、海馬の障害に比べて困難なことが問題となっている。近年の研究により、線条体は海馬などに比べ、運動療法を長期間必要とすることが分かってきたが、未だ線条体梗塞からのリハビリのメカニズムに関する研究は少ない。本研究では、線条体の微小梗塞モデル動物の作製と、後に起こる神経細胞の病的変化に注目し、組織学的、電気生理学的手法で測定し解明を試みる。本年度は安定したモデル動物の作製と、その組織変化の観察を中心に行った。脳虚血モデルは、全脳虚血モデルと局所脳虚血モデルに分けられるが、全脳虚血モデルは脳血流減少の程度が強く、短時間の一過性虚血により選択的脆弱性を有する細胞群に神経細胞死を引き起こす。一方、局所脳虚血モデルは、閉塞血管の支配領域に従って脳梗塞となり病態の進行は速やかでヒトの脳梗塞のモデルであるとされているので、本研究においては局所脳虚血モデルマウスを作製し、組織学的な変化の測定を行った。組織学的な変化としては、脳虚血時間を数段階に分け、虚血により引き起こされる梗塞部位の大きさの変化と、主にペナンブラ領域とその周辺部位における細胞数及び受容体数の変化を測定及び解析を行った。
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