研究課題/領域番号 |
18K10703
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
齊藤 展士 東京家政大学, 健康科学部, 教授 (60301917)
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研究分担者 |
笠原 敏史 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10312422)
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 高齢者 / 筋活動 |
研究実績の概要 |
我が国における総人口に占める高齢者の割合は,過去最高を記録し続け,超高齢化が進んでいる.超高齢化社会への移行に伴い高齢者の転倒が増え,骨折や寝たきりが社会問題になっているため,我々は転倒予防の観点から,バランス能力の改善を目指し姿勢制御の学習メカニズムについて研究してきた. 足底や筋への寒冷刺激と振動刺激の組み合わせが,立位バランス保持にどのような影響を与えるかを健常若年者で調べた.その結果,両刺激の組み合わせがバランス保持に大きな影響を及ぼした.このことは,中枢神経系疾患の患者における複数の体性感覚異常が,バランス動揺の重要な因子であることを示唆する. さらに別の実験として,健常若年者と健常高齢者のバランス能力の改善を目的に自発的姿勢コントロール能力を調べた.前方のモニターに表示された動く視標に姿勢をコントロールさせ,足圧中心を一致させる実験を行った.姿勢コントロールにおける開始と停止のための戦略に加齢が影響しているかどうかを姿勢筋の応答により調べた.高齢者では若年者より有意に股関節筋の働きが増していた.主動作筋と拮抗筋の活動比で観察した同時収縮時間は高齢者で有意に延長され,相反的な筋収縮パターンの検出が不明確であった.これらの応答は高齢者は運動停止の前に拮抗筋が活動することでバランスを保持する戦略をとることを示唆している.また,高齢者の姿勢戦略の変化は姿勢筋の活性化だけでなく抑制にも関連しているかもしれない. このように,高齢者のバランス能力の現状の把握やその示唆から考えられる能力低下予防のために,今後,立位姿勢の動揺に関与する筋の機能を向上させる方法を検討すべきである.筋への振動刺激により筋緊張を変化させることが可能であるので,立位バランスへの振動刺激の効果と体性感覚の関与を高齢者や中枢神経疾患患者で調べ,バランス能力改善方法の開発を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響のため,本研究で対象としている高齢者だけでなく若年健常者ですらリクルートできず,実験準備を整えるに留まってしまったため,申請時の予定よりやや遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
現在,新型コロナウイルスの感染拡大の影響により,学外者だけでなく学生も大学構内に立ち入れない状況が続いている.そのため,本研究の対象者である高齢者や若年健常者に対して継続的な実験が行えない状況にある.この状況が改善すれば可能な限り申請時の研究計画に沿って研究がスムーズに進むよう準備を整えていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により高齢者や若年健常者を継続的にリクルートすることが困難になった.そのため,被検者や補助者に係る謝金を次年度に繰り越すことになった.新型コロナウイルスの感染拡大の影響が小さくなれば,本来の予定に合わせて計画的に助成金を使用できるよう努める.
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