本研究の目的は,作業参加が疾病予防・死亡率・QOL等に及ぼす影響を明らかすることである。本人にとって大切な活動に従事できること,つまり,作業参加は健康と生活の質(QOL)にとって重要である。しかし,長期間の観察疫学的根拠は十分ではない。そこで,本研究では2007年から14年間の追跡調査を行った(注:当初は12年後の追跡予定であったがCOVID-19流行の影響にて変更した)。本研究デザインはコホート研究である。対象者(研究参加者)は茨城県在住の高齢者498名であった。本研究は研究計画に基づき,昨年度末までに本調査を完了した。本年度は,データ入力および解析を中心に行い,その成果の発表を開始したところである。本研究は解析中であるが,これまでに以下のような知見が明らかとなった。 1.COVID-19流行下における地域高齢者の余暇活動の制限状況および,その健康状態(介護予防の効果,抑うつ・不安感,生きがい,主観的健康感,習慣化など)への影響が明らかとなった。 2.コロナ恐怖感と生活習慣,余暇活動,抑うつ・不安の関連を構造方程式モデルにてその関係性を明らかにした。コロナ恐怖感から抑うつ・不安へは直接的影響だけでなく,習慣化と余暇活動を介した間接的影響が同程度あった。 3.作業参加が14年後の入院および要介護認定のリスクを抑制することが明らかとなった。作業参加の良好群は不良群と比べて14年後の入院(過去1年間)するリスクが0.61倍低かった。同様に,要介護認定を受けるリスクが0.31倍低かった。 4.作業参加が14年後の慢性疾患(心疾患および脊柱・脊髄障害)の有病率を低下させることが明らかとなった。作業参加の良好群は不良群と比べて14年後の「心疾患」の有病率が0.38倍低かった。同様に,「脊椎・脊髄障害」の有病率が0.48倍低かった。 今後さらなる解析とその知見の公表を進めていく予定である。
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