研究課題/領域番号 |
18K10709
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
弓削 類 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (20263676)
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研究分担者 |
末田 泰二郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 名誉教授 (10162835)
栗栖 薫 広島大学, 医系科学研究科(医), 名誉教授 (70201473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 微小重力 / 細胞移植 / 神経再生 / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、模擬微小重力環境で培養した間葉系幹細胞の中枢神経疾患モデルに対する治療効果を解明することを目的とし、継続した研究を行ってきた。 前年度までに、模擬微小重力環境で培養された間葉系幹細胞ではGdnf、Vegfなどの神経栄養因子に加え、Tsg-6といった抗炎症因子の遺伝子発現が増加したことが明らかとなった。このことから、微小重力環境は間葉系幹細胞の神経保護ならびに抗炎症作用を高めることが示唆された。さらに、神経細胞に対して急性期に生じる炎症ストレスならびに酸化ストレスを与えるIn vitroモデルにおいて、模擬微小重力環境で培養した間葉系幹細胞の培養上清は炎症ストレスに対してはネクロトーシス、酸化ストレスに対してはアポトーシスの抑制を介して神経細胞の生存率を高めた。このことから中枢神経疾患モデルに対してより高い治療効果が得られる可能性が示され、本年度は脊髄損傷モデルラットに対して急性期での細胞投与を行い、その効果とメカニズムの検証を行った。 虚血性脊髄損傷モデルラットに対し、急性期で通常重力環境または模擬微小重力環境で培養された間葉系幹細胞を投与し、運動機能の評価を行った。その結果、無処置に比べ、模擬微小重力環境培養で有意な運動機能の改善を示した。機能改善のメカニズムとして、脊髄におけるアポーシスとそれに対する内因性の神経保護をターゲットとし、組織学的解析を行った。その結果、模擬微小重力培養を行った間葉系幹細胞を投与された群では、脊髄組織における活性化したアストロサイトからのBDNFの産生が豊富であり、神経細胞のアポトーシスが減弱していることが明らかとなった。以上より、模擬微小重力環境での培養は間葉系幹細胞の神経保護効果を高めることが示され、薬剤や遺伝子処理を必要としない簡易かつ効率的な培養環境であることが示唆された。
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