研究課題/領域番号 |
18K10711
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中野 治郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20380834)
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研究分担者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080) [辞退]
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091) [辞退]
石井 浩二 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40404248) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん性疼痛 / 経皮的電気刺激 / がんリハビリテーション / 緩和ケア / 物理療法 / 嘔気 / 食欲不振 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はがん患者の疼痛とその他の身体症状に対する経皮的電気神経刺激(TENS)の安全性と有効性を確立することである.2019年度は研究計画に従い,臨床研究のデーター収集を行った.倫理委員会の許可は昨年度に得られており,予備実験は終えている.ただ,予備実験の進捗から考えて,予定にある3群でのRCTデザインは困難であると考え,TENS実施期間と非実施期間の2条件クロスオーバー試験に変更した.対象は長崎大学病院に入院したがん性疼痛を有する患者で,最終的に20名が参加した.TENSはリハブ400(日本シグマックス)を用い,刺激部位はがん性疼痛と同脊髄レベルの背部,Th1~10の背部,両側足関節内側(S2領域)とし,実施期間は1週間(20分,1回/日)とした.調査項目は痛み,オピオイド量,レスキュー回数,身体症状(QLQ-C15-PAL),排便回数とした.結果,痛みと嘔気,食欲不振はTENSの実施によって有意な改善を認めた.他の身体症状に関してはTENSの効果は認めなかった.今回の結果から,TENSはがん患者の痛みだけでなく嘔気と食欲不振を軽減させる可能性が示された.これらの結果は英語論文にまとめて国際学術雑誌に投稿した.また,予備調査として行ったがん患者の痛みと身体症状の発生状況について論文にまとめ,国際および国内雑誌に投稿した. 一方,昨年度から進めてきた動物実験を今年度も継続し,データの追加と試料の生化学的解析を行った.結果としては,乳がんモデルラットの腫瘍に対して電気刺激(100Hz)を負荷しても,腫瘍サイズと発生数の増加,白血球の増加,赤血球とヘモグロビンの低下といった明らかな悪影響は認められなかった.このことから,がん患者に対してTENSを行う際,電気刺激が腫瘍に及んだとしても安全は担保できることが示された.これらの成果は来年度に発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験は予定通り終了した.発表は2020年度とする.臨床研究に関しては研究デザインを変更したが,目的は果たせている.臨床研究の成果はすでにいくつかの学会で発表し,また論文として学術雑誌に投稿し,掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに果たせていないのは,TENSの刺激条件の比較である.計画には,TENSの電気刺激100Hzと10Hzの効果の違いを検討することが含まれていたが,予定よりも参加者が少なかったため,100Hzの条件でしか実施できていない.今後,この点の検討を行っていく予定であるが,残り1年ですべてのデータが揃う見込みは少ない.したがって,パイロットスタディとして実施し,次の課題申請に繋げていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の臨床研究の対象者数が小さくなったため,その分の消耗品費用を繰り越す形となった.翌年に臨床研究を引き続き行っていくため,必要な消耗品を購入する必要である.
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