研究課題/領域番号 |
18K10714
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
大城 琢磨 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00536550)
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研究分担者 |
宮里 実 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70301398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 加齢 / 尿道平滑筋 / 尿道括約筋 / 排尿障害 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
これまで我々の研究で加齢に伴う排尿障害の一因として、膀胱機能の低下を証明してきた。我々は現在加齢に伴う排尿障害の原因として尿道機能に注目しており、加齢モデルラットを用いて、各年代での尿道機能を解析し加齢に伴う排尿時尿道の弛緩不全および収縮力の低下が残尿量の増加に寄与するとの仮説のもとにその研究を行っている。より生理的な状態に近い覚醒状態での若年及び加齢ラットの排尿機能の変化、特に残尿の増加がみられることを発見した。若年ではほとんど残尿はみられないが、1歳齢のラットで0.18ml、2歳の老齢ラットで0.36mlと加齢とともに増加した。加齢における尿道の機能の変化を評価するため若年のラットを用いて、尿道内に圧トランスデューサーを挿入して尿道の機能を確認。さらに中年および老年のモデルラットでも同様に研究を行い、加齢に伴い排尿時の尿道の弛緩が抑制され、排尿効率が低下していくことが証明され国際尿禁制学会で発表した。尿道平滑筋の機能の変化について一酸化窒素の働きに着目してアゴニストとしてLアルギニン、アンタゴニストとしてL-NAMEを投与して、一酸化窒素が尿道に及ぼす影響を確認した。また尿道平滑筋のみならず尿道括約筋の働きに着目し、針電極を用いて加齢に伴う尿道括約筋の機能変化を確認。加齢に伴い排尿時の尿道括約筋の律動的収縮が不明瞭となっていた。このことから排尿効率には尿道括約筋も重要な働きをしていることが証明された。さらには組織学的変化について検討。尿道括約筋の筋束の密度も加齢に伴い減少していることが示され、国際尿禁制学会で発表を行いその内容について現在論文執筆中である。 今回の科研費で行った研究で得られた知見をもとに、さらに治療法についての研究も行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢に伴う排尿機能の低下の原因について尿道機能の変化、特に原因として虚血や一酸化窒素の減少によるものである可能性が示されたことに加えて、一酸化窒素のアゴニスト投与による排尿時の尿道平滑筋の弛緩の増大、尿道機能の改善が証明された。尿道括約筋の排尿に対する機能にも着目して、加齢に伴う尿道括約筋の変化特に畜尿期のみならず尿排出時における尿道括約筋の機能的低下、器質的変化が評価できたことは排尿の研究について今後の新しい方向性を示唆することができた。このことから今後の排尿障害治療の新しい方向性が開かれ、治療の研究につながるものと考えられる
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で、加齢に伴う排尿障害は膀胱のみならず尿道の機能も大きく関与していることが証明できた。加齢に伴う尿道機能の低下は、一酸化窒素の前駆物質のLアルギニンを投与することによって改善するが、今後は治療に着目し具体的にはより代謝の影響を受けない薬剤(ニトロプルシドやグアニル酸シクラーゼアクチベータ)を用いて、一酸化窒素の反応系に作用するより効率高い治療方法の研究を開始しており、その成果が見込まれている。また薬物治療以外にも体外衝撃波による物理的な治療方法での虚血改善効果の検証、排尿障害の治療研究を進めていく方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費について国際学会及び国内の学会の参加、成果発表予定がCOVID-19影響もあり中止され残金が生じた。そのため次年度での参加や成果発表の費用としての使用を予定している。 物品購入について実験継続のため使用薬品の購入及び、実験動物の購入、実験における手術用具および消耗品の購入を行う予定である。 論文掲載費用について、現在の研究成果に関して論文執筆を行っている。国際誌論文掲載に関する費用として使用予定している。
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