我々は排尿障害について加齢に伴う変化をテーマに研究を行い、膀胱の機能的器質的変化について証明してきた。これまで行ってきた研究、実験結果から排尿機能には尿道の役割が大きく関わっていることが推察されたため、加齢に伴う膀胱の収縮力の低下に加え排尿時尿道の弛緩不全が残尿量の増加に寄与するとの仮説のもとにその研究を行ってきた。覚醒状態での排尿機能を確認する研究では、加齢に伴って膀胱収縮に差がみられなくても残尿が増加することが確認された。若年ではほとんど残尿はみられないが、1歳齢、2歳齢の老齢ラットで加齢とともに増加した。この結果から尿道に何らかの原因があり排尿障害を来していることが推察された。そのため加齢における尿道の機能の変化を評価するため若年、中年及び老齢のラットを用いて、尿道内に圧トランスデューサーを挿入して尿道の機能を確認した。尿道平滑筋の機能の変化について一酸化窒素の働きに着目してアゴニストとしてLアルギニン、アンタゴニストとしてL-NAMEを投与して、一酸化窒素の尿道に及ぼす影響が若年と加齢に差があることが確認された。さらに尿道括約筋の働きにも着目し、針電極を用いて加齢に伴う尿道括約筋の機能変化を確認したところ、加齢に伴い排尿時の尿道の弛緩が減弱し、排尿時の尿道括約筋の律動的収縮が不明瞭となっていることを確認した。織学的変化についても、尿道括約筋の筋束の密度が加齢に伴い減少していることが示された。このことにより、加齢に伴い尿道においても尿道平滑筋や括約筋の機能低下により排尿効率が低下していくことが証明され学会で発表した。これらの結果を国際学会で発表を行いその内容について論文執筆を行い学術雑誌のPhysiological reportsに掲載された。今後は今回行った研究で得られた知見をもとに、さらに治療法についての研究を行っていく予定である.
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