研究課題/領域番号 |
18K10715
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
谷口 圭吾 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (90381277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動器理学療法 / 筋メカニクス / 医用画像評価 |
研究実績の概要 |
本年度は,ヒト骨格筋における力学的な特性の可塑性解明および運動療法の基盤形成にむけて,筋メカニクス評価の生理学的および臨床的な意義の確立に関わる実験をおこなった.献体を対象とし,長内転筋に0 gから600 gまで重錘負荷を加え,せん断波エラストグラフィを用いて筋の近位,中央,遠位部で弾性率を計測した.その結果,筋弾性率と伸長負荷の関係は,いずれの部位においても有意に強い線形関係を示した(近位; R2 = 0.989,中央; R2 = 0.986,遠位; R2 = 0.983).弾性増加率と筋重量は,有意に強い負の相関関係を認めた(r = -0.729).同様に弾性増加率と筋断面積も中等度の負の相関関係を認めた(r = -0.413).筋弾性の定量により筋の張力変化を推定評価でき,弾性-力関係の傾きに相当する弾性増加率は,形態特性に関連することが明らかとなった. また,外的圧迫が等尺性収縮時の筋弾性に及ぼす影響を検討した.若年健常人の腓腹筋内側頭を対象とし,膝伸展0°で足関節中間位での等尺性底屈運動を最大随意収縮(MVC)の0%,20%,40%,60%で実施した.装着条件は装着無し,下腿スリーブ装着の2条件とした.筋縦断面の筋束を関心領域に弾性率を測定した結果,筋弾性は収縮強度と装着条件の交互作用を認めた(P<.05).スリーブ装着時の弾性率は装着なし条件と比較し,安静時(0%)では差を認めないものの,20%(減少率:-5.1%),40%(減少率:-10.7%),60%MVC(減少率:-16.3%)において低値を示した.したがって骨格筋の外的圧迫は筋収縮に伴う弾性増加を抑制することから筋の力学ストレスを緩和する可能性が示唆された.これらの知見は剪断波イメージングを用いた筋メカニクス評価の臨床的有用性の解明に繋がる基盤になりうると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加振とドプラ法に基づくせん断波の映像化システムの有用性検証は今後の継続した検討が必要であるものの,筋弾性の可塑的な変化や筋メカニクス評価の妥当性を多角的に検討する実験はほぼ予定通り遂行できている為.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,骨格筋を標的にカラードプラ法で筋内の剪断波を映像化・定量化することにより得られる筋弾性値と従来の音響放射圧法による筋組織弾性値との比較検証を予定している.本実験を遂行することで新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価の妥当性を検討し,その成果を学術大会および国内外の論文で公表する計画を立案している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由について,ドプラ法によるせん断波の映像化システムを活用した筋メカニクス可塑性評価と運動療法の基盤形成のなかで,特に新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価方法の確立に向けた実験が遂行できなく2022年に実施予定である為.2021年度の研究経費は申請時に記載した使途に加えて,前年度の助成金残額を使用し,超音波画像の撮像に要する力学試験機器や消耗品の購入,研究協力謝金や学会発表・論文投稿時の費用に充てる予定である.
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