研究課題/領域番号 |
18K10723
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中原 康雄 帝京大学, 医学部, 准教授 (80595968)
|
研究分担者 |
緒方 直史 帝京大学, 医学部, 教授 (10361495)
芳賀 信彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80251263)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | リハビリテーション / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
バーチャルリアリティ(Virtual Reality: VR)は仮想現実ともいわれており、コンピューターにより合成されたCGや映像の効果により、特定の機器を装着することで3D空間内にVR体験者の身体が投影され、その空間内へ360度3Dの世界に入り込む没入感を得ることのできる技術である。VRの活用が最も進んでいる分野はゲームの領域であるが、それ以外でもビジネス, 通信, 教育などの分野でも活用が始まっている。医療の分野でも徐々にVR技術の研究・活用が進んできている。“リハビリテーション”を実施するうえで、効果的な訓練法の開発は常に重要な課題であり、本研究の目的は、このVR技術を活用した「仮想現実」の環境で高次脳機能障害, 上下肢機能障害に対する訓練が可能となる新しい訓練システムを構築し、その有用性を検討することである。本システムは対象者がヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して仮想現実空間の中に身をおき、身体の動きをトラッキングすることで、対象者の高次脳機能, 上下肢機能の訓練, 評価を行うシステムである。構築されるVR環境は装着するHMD前面のみに投影される形式とは異なる没入型のimmersiveな環境となり、3D空間を自由に利用した訓練内容の設定が可能となるだけでなく、病室や訓練室といった従来の一般的なリハビリ環境とは異なる3DCGや映像で表現された空間内での視覚の変化を活用した訓練が可能となる。視覚入力を脳にフィードバックすることにより全身の運動イメージの学習を強化する治療装置を開発し、その臨床的有用性を検証するとともに、本治療装置が運動機能に与える影響について安全性を含めて包括的に検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究を進める中で分かってきた知見をもとに没入型ヘッドセットデバイスとなるWindows Mixed Reality Headsetを中心としたVR環境の更なる改良、ハンドトラッキングの導入や実空間の3D再構成技術を取り入れるなどVR環境下で作動するリハビリテーションコンテンツを拡充した。3D空間を自由に使用することでより汎用性のある訓練内容を作成するとともに、脳血管障害の麻痺に対する共同運動から分離運動につながるような訓練など、リハビリテーション医学に基づいた疾患に適した訓練内容に加え、高次脳機能障害についてはVR空間を生かした半側空間無視に対する訓練を構築し、更に注意障害, 身体失認, 観念運動失行, 観念失行, 視覚失認といった他の高次脳機能障害への対応も目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
構築した訓練プログラムが適切にVR環境下で適切に安全性をもって動作するよう引き続き調整を行っていく。開発したシステムを実際の訓練へ適用するとともに、表面筋電計やゴニオメーターによる筋収縮の改善や分離運動に向けた回復, 可動域改善の程度、Simple Test for Evaluating Hand Function (STEF)やPurdue Pegboard Testを用いての上肢機能の変化、歩行分析装置や重心動揺計を用いての歩行機能, 荷重バランスの変化、評価バッテリーやアイトラッキングシステムなどを用いての高次脳機能障害の変化、評価表を用いてのQOLや心理的要素変化の測定, 解析といった、訓練内容および訓練環境による効果の評価を実施するとともに、VR酔いなどといった副作用の有無に関しての評価を行うことを研究期間内の目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主にVR環境下で作動する訓練プログラムの更なる開発に向けたソフトウェアやデバイス構築に向けて使用した。次年度使用額が生じたため引き続き開発したVR用リハビリテーションプログラムを安全に実施するための機器、リハビリテーション効果判定用設備、ヘッドセット使用時に必要となるアイマスクや評価時に必要となる表面電極、ハードディスクやSDカードなど開発したプログラムデータ保存用の記録メディアなどに使用される予定である。
|