研究実績の概要 |
本研究では、脳卒中後に生じる片麻痺に対する治療として、新たに「電気刺激を用いた新たな治療用ロボット」を開発し、その効果や作用メカニズムを検証した。これまでの機器では困難とされてきた手関節・手指・足関節などの個々の筋肉を選択的に電気刺激するシステムを組み込むことで、随意的な筋収縮に合わせて関節運動が可能なシステムを考案した。本研究では、運動学習理論に基づきこの治療用ロボットを用いた麻痺肢に対する新しい治療法を確立した。また、作用メカニズム解明のために近赤外線分光法(fNIRS)や電気生理学的検査を行い、脳の可塑性発現の実証ならびにさらに効果的治療の開発を行い、機能回復を促進するリハビリテーション治療の確立を行った。 平成30年度は、電気刺激を用いたロボット治療の効果の確認とfNIRSや電気生理学的検査を実施した。令和1年度は、ロボット開発を完成ののちにその治療効果の確認のためfNIRSや電気生理学的検査を実施した。令和2年度は、さらに効果的なロボットシステム開発についてのデータ取得と結果のまとめを行った。得られたデータは、学会発表し、論文にまとめた(Nakazono T, et al. TopStrokeRehabil 2021; Miyata R, et al. BiomedMaterEng 2020; Miyara K, et al. TopStrokeRehabil 2020; Matsumoto S, et al. BMJOpen 2019; Miura S, et al. JStrokeCerebrovascDis 2019)。 治療効果をフォローしながら片麻痺や脳・神経・筋の活動を解析し、有効性を実証することでリハビリテーションロボット治療が今後の脳卒中片麻痺患者への新しい治療法のひとつになると考えられた。さらには、医療経済や社会に対しても非常に価値ある研究といえる。
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