研究課題/領域番号 |
18K10726
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
村松 憲 杏林大学, 保健学部, 准教授 (00531485)
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研究分担者 |
志茂 聡 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (80734607)
丹羽 正利 杏林大学, 保健学部, 教授 (90274985)
生友 聖子 東京医療学院大学, 保健医療学部, 助教 (90515884)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 錐体路 / 皮質脊髄路 / 糖尿病性神経障害 |
研究実績の概要 |
皮質脊髄路(錐体路)は大脳皮質から脊髄に運動指令を伝える伝導路で、その損傷によって筋力低下や運動麻痺が生じることから、随意運動の発現に極めて重要な役割を果たしていると考えられている。この錐体路の障害とその症状、治療法などは脳卒中などを中心に研究が進められてきたが、我々は最近、皮質脊髄路を構成する軸索が糖尿病によって損傷することを発見し、糖尿病患者において観察される運動障害にも皮質脊髄路障害が関与する可能性を示した(Muramatsu et al., 2018)。我々はこの報告の中で皮質脊髄路軸索損傷の兆候の一つとして伝導速度低下を示したが、末梢神経では伝導速度の低下と糖尿病性神経障害の進展に強い相関が認められるため、その詳細を調べることは極めて重要である。そこで、平成30年度は糖尿病モデル動物の皮質脊髄路軸索について伝導路全体の伝導速度ではなく、単一細胞の活動電位を指標に伝導路を構成する単一軸索の伝導速度を計測することにした。その結果、伝導速度の低下度合いは軸索毎に相当なばらつきがあり、ほとんど影響を受けず伝導速度が正常の範囲内に留まるような軸索もあれば、大きく伝導速度を低下させている軸索が混在して存在していることが明らかとなった。このようなまだらな伝導速度低下は同じ皮質脊髄路細胞の中に糖尿病の影響を受けやすい細胞と糖尿病の影響を受けにくい細胞が存在する可能性を調べている。これらの特徴を形作る原因についてさらなる解析を加えることによって、糖尿病性錐体路障害のメカニズムやその治療方法の開発などに役立たせることができる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に所属機関が変わり、研究室の整備に時間を要したため多少の遅れが生じている。当該年度は皮質脊髄路軸索の伝導速度の計測と同軸索の超微形態について電子顕微鏡を用いた解析を行う予定でいたが、伝導速度計測は予定通り終えたものの、軸索の超微形態の観察はできなかった。ただし、すでに組織標本などの採取は終わり、形態観察を残すのみの状態であるため、次年度以降に遅れを取り返せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に実施予定だった皮質脊髄路軸索の形態観察を年度の初頭に行い、それ以後は研究計画に従って皮質脊髄路の損傷が糖尿病モデルラットの身体運動に与える影響を調べる目的で、筋電図学的解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調達価格よりも安価な値段で必要物品が購入ができたことと、所属機関の異動により研究環境に変化が生じ、研究を実行するために必要な実験機材、消耗品が変更となった結果、次年度使用額が生じた。これらの予算については次年度の実施予定の免疫組織化学関係の消耗品購入費用に充てる計画である。
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