研究課題/領域番号 |
18K10727
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
田辺 茂雄 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (50398632)
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研究分担者 |
小山 総市朗 藤田医科大学, 医療科学部, 講師 (90754705)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リハビリテーション / ロボット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,WPALを使用した自立歩行時の最適な歩行器操作法を解明することである.まず,ロボット補助歩行時の,歩行者と歩行器の距離を計測するシステムを構築する.次に,定常歩行時の時系列データから,練習すべき動作課題を明らかにする.最後に,転倒につながる姿勢変化を再現し,姿勢変化発生に至る過程を明らかにする. 平成30年度は,レーザ測距センサを用いた,歩行者と歩行器の距離を経時的に計測するシステム構築を進めた.具体的には,専用歩行器の前方にある横パイプにセンサを設置し,有線にてアナログデジタル変換器に接続,コンピュータでリアルタイム表示とデータ集録するシステムを試作した.データ集録条件として,サンプリング周波数は1kHz,距離分解能は1mmに設定した.今年度は,システムの精度を検証するため,出力される距離データと真値との比較をBland-Altman分析を用いて行った.測定距離範囲は,想定変動範囲を含む100mmから1000mmとした.計測の結果,システム出力値から真値を減じた距離の誤差平均値とその標準偏差は,-1.9±1.1mm,誤差の範囲は1mmから-3mmであった.また,システム出力値と真値の相関係数は-0.35であった. 歩行者と歩行器の距離を経時的に計測する試作システムの精度検証をBland-Altman分析を用いて行った結果,系統誤差である固定誤差および比例誤差はともに低値を示した.また,偶然誤差についても同様に低値を示した.したがって,次年度から行う歩行時の体幹下部と歩行器との距離を経時的に計測するシステムとして十分な精度を持つと考えられる.ただし,体幹もしくは股関節角度の影響によって,適切に歩行者位置を推定できない場合には,体幹上部や下腿部位置の追加計測を検討する必要があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,WPALを使用した自立歩行時の最適な歩行器操作法を解明することである.まず,ロボット補助歩行時の,歩行者と歩行器の距離を計測するシステムを構築する.次に,定常歩行時の時系列データから,練習すべき動作課題を明らかにする.最後に,転倒につながる姿勢変化を再現し,姿勢変化発生に至る過程を明らかにする.研究全体での具体的な目標は以下の3項目である. ①測距センサを用いて,歩行者と歩行器の距離を経時的に計測するシステムを検討,構築する.WPALの専用歩行器前方にある横支柱など,歩行中に安定して精度良く計測できる位置にセンサを設置する. ②定常歩行時の歩行者-歩行器距離の経時的変動を計測し,自立歩行獲得に向けて練習すべき動作課題を明らかにする.WPALを用いた歩行を十分習熟した後,定常的な平地歩行を行っている際の歩行者と歩行器の距離の計測する. ③転倒につながる姿勢変化を模擬的に再現し,経時的な距離の変化を明らかにする.模擬する姿勢変化は,過去の報告でWPAL歩行中に生じやすいとされている変化とする.経時的な距離の変化を基に,姿勢変化発生に至る過程を計測し,その予防等について考察を行う. 平成30年度の研究実施計画では,①について実施予定であったが,予定通り完了した.歩行者と歩行器の距離を経時的に計測する試作システムの精度検証を行った結果,系統誤差である固定誤差および比例誤差はともに低値を示した.また,偶然誤差についても同様に低値を示した.したがって,次年度から行う歩行時の体幹下部と歩行器との距離を経時的に計測するシステムとして十分な精度を持つと考えられる.このシステムを用いることによって平成31年度(令和元年度)に予定していた②の実施が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究において,ロボット補助歩行時の,歩行者と歩行器の距離を計測するシステムを構築できたことから,当初の計画で平成31年度(令和元年度)に行う予定であった定常歩行時の時系列データから,練習すべき動作課題を明らかにする. 今回の研究に関するインフォームド・コンセントが得られる健常者を対象として,研究実施機関などで研究内容を掲示して募る.その際に,研究への参加・不参加は個人の自由であり,個人の意思に基づくものであること,研究に不参加または中止の時も何ら不利益を得ることはないことを十分に説明する.また,すべての実験は倫理委員会承認後に行う. 対象者は,WPALを用いた歩行を十分習熟した後,定常的な平地歩行を行い,その際の歩行者と歩行器の距離の計測する.加えて,WPALが生成する他動的な下肢動作との関係を検討するため,WPALの歩行周期も同期して取得するシステムを検討,構築する.これらから得られる情報を基に,歩行周期のどの時期に身体を前方へ移動させるのか,歩行器を前方へ移動させるのか,について検討を行う. 主な購入物品は,解析用デスクトップPCなどを予定している.研究計画の申請時には,歩行器を計上していたが,まずは現有するものを使用し,加工が必要となった際に購入を検討する.また,体幹もしくは股関節角度の影響によって,適切に歩行者位置を推定できない場合には,体幹上部や下腿部位置の追加計測に向けたセンサおよびセンサ固定器具の購入を検討する.
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