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2020 年度 実施状況報告書

予後予測因子解明に向けた吃音のある幼児の発話関連能力の縦断的調査

研究課題

研究課題/領域番号 18K10735
研究機関国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)

研究代表者

酒井 奈緒美  国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究室長 (60415362)

研究分担者 越智 景子  東京工科大学, メディア学部, 助教 (20623713)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード吃音 / 幼児 / 構音速度 / 発話長 / turn-taking gap
研究実績の概要

令和元年度の分析結果に基づき、令和2年度は親子の遊び場面における自由会話の発話データを主な分析対象とすることとし、昨年度データ収集を行った5名のうちの2名、及び新たな協力者11名の計13名の吃音のある幼児とその親に対してデータ収集を行った。
発話データの分析観点は、①子の吃音症状(非流暢性)、②親子の構音速度(pauseを除いた時間1秒あたりの発話モーラ数)、③子の発話長(inter-pausal unit (IPU:200ms以上の無音区間によって区切られた音声区間)あたりの発話モーラ数)、④turn-taking gap(親の発話の終了時点から、続く子の発話開始までの時間)とした。
現在までに4-6歳の5名について、言語訓練室と自宅における親子の発話の分析が終了している。吃音症状が含まれるturnと流暢なturnの最初のIPUのモーラ数、吃音症状が含まれるturnと流暢なturnの直前のturn-taking gapについての比較が終了した。その結果、吃音が生じているturnにおける最初のIPUのモーラ数が、流暢なturnのモーラ数と比較して、有意に長かった(p<0.05)。また、turn-taking gapについては、自宅データに関しては、吃音が生じる直前のgapが有意に短く、一方訓練室では有意に長かった(p<0.05)。しかしながら、流暢な発話の直前のgapはどちらの環境においても平均して1秒程度であった。親の構音速度は、訓練室に比して、自宅データにおいて有意に速かった。
長いIPUにおいて吃音が生じていることは、複雑な発話の企図が吃音の誘因となっている可能性を示唆している可能性がある。また訓練室と自宅でのturn-taking gapの違いは、親の発話速度に影響を受けている可能性が考察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度から、各対象者に自宅での発話データの収集を依頼することとし、新たな対象者も募集したが、COVID-19の感染拡大による来所頻度の減少などから、新たな対象者を獲得するのに時間を要した。また同様の理由で、継続的なデータ収集が困難となり、十分なデータ数が得られなかったことから、非流暢性の時間的変化と発話スタイル(モーラ数や構音速度など)との関連の分析にまで到達しなかった。

今後の研究の推進方策

COVID-19の影響で来所頻度が低下する場合は、郵送にてデータの回収や新たなデータ収集を依頼することとし、同一の対象者から継続的なデータ収集を積極的に行うこととする。吃音(非流暢性)の評価を研究代表者が、構音速度等の発話分析を研究分担者がそれぞれ担うようにし、作業を分担して進めることで、研究の進度を上げ、次年度中に継続的な発話データの分析に基づく知見を報告することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の影響により収集できたデータ数が少なかったため、研究協力者への謝礼金、データ加工処理を担当する補助員へのアルバイト費用が当初の予定より少なくなった。また本年度は国際学会への参加も予定していたが、COVID-19の影響により、大会がオンラインによる開催、あるいは延期へと変更になったため、参加費や旅費が発生しなかった。今年度の繰越金については、分析効率を上げるための精度の高いコンピューターの購入、今年度に増やす予定のデータ分析にかかる費用(研究協力・アルバイトへの謝礼)に、充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Comparison of social anxiety between Japanese adults who stutter and non-stuttering controls2020

    • 著者名/発表者名
      Chu, S. Y., Sakai, N., Lee, J., Harrison, E., Tang, K. P., and Mori, K.
    • 雑誌名

      Journal of Fluency Disorders

      巻: 65 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.jfludis.2020.105767

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Impact of workplace conditions, co-occurring disorders and communication attitudes on the quality of life of adults who stutter2021

    • 著者名/発表者名
      Iimura, D., Sakai, N., Miyamoto, S.
    • 学会等名
      12th Oxford Dysfluency Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 吃音のある幼児の流暢性と発話長に関する予備的調査2020

    • 著者名/発表者名
      酒井奈緒美、越智景子、角田航平
    • 学会等名
      第46回日本コミュニケーション障害学会学術講演会
  • [学会発表] 吃音の発症・経過と子どもの気質との関連2020

    • 著者名/発表者名
      酒井奈緒美、菊池良和、原由紀、宮本昌子、小林宏明、竹山孝明、宇高二良、須藤大輔、森浩一
    • 学会等名
      第65回日本音声言語医学会総会・学術講演会
  • [学会発表] Liebowitz 社交不安尺度を用いた吃音のある成人のサブタイプ化の試み2020

    • 著者名/発表者名
      灰谷知純、酒井奈緒美、森浩一、北條具仁
    • 学会等名
      日本吃音・流暢性障害学会第8回大会
  • [学会発表] 幼児吃音臨床ガイドラインの解説 吃音臨床ガイドラインの添付資料: 吃音に関する情報発信2020

    • 著者名/発表者名
      酒井奈緒美
    • 学会等名
      第65回日本音声言語医学会総会・学術講演会ポストコングレスセミナー
    • 招待講演
  • [図書] 標準言語聴覚障害学 発声発語障害学第3版2021

    • 著者名/発表者名
      酒井奈緒美(分担執筆)藤田郁代(監修)城本修・原由紀(編集)
    • 総ページ数
      344(264-276)
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-04289-5

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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