研究実績の概要 |
発達性吃音は幼児期に約5%の割合で発症することばの非流暢性であり、約1%が成人しても残ると言われている(Guitar, 2014)。吃音の原因には遺伝的要因、環境要因等様々なものがあり、脳の発達的側面では、言語に関係する脳部位(ブローカ野)での機能的器質的な違いが吃音のある群ない群であることが知られている(Sommer, et al., 2002; Chang, et al, 2015)。また、吃音から回復した群と残存する群を比較すると、回復群では幼児期に脳梁等の体積に差があることがわかってきている(Chang, et al., 2018)。これまでに、脳機能構造測定として脳の白質(神経繊維)の接続を測定する拡散テンソル画像法にて角回白質部分の接続性が低下していることを報告している(Yasu, et al. , 2018)。本研究では吃音の介入前後で神経接続および機能的接続(デフォルトモードネットワーク)が変化するかどうかを明らかにする。2019年度は、耳鼻科医、言語聴覚士、臨床心理士との連携し、主に介入前の脳機能構造データ取得と解析を行った。安静時の脳活動測定から得られたデフォルトモードネットワークの測定データについては、介入前のデータ解析が完了した。吃音のワーキングメモリとの関係を示した論文を投稿し掲載された(Arongna, et al. 2020)。今後は介入後の追跡を見据えて心理実験データとの相関分析を進める。また、成人の吃音のある群を対象として、介入前後で脳機能構造に差があるのかを追跡的に分析する。
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