研究実績の概要 |
本研究では吃音の介入前後で神経接続および機能的接続(デフォルトモードネットワーク)が変化するかどうかを明らかにすることを目標としていた。吃音の症状と脳機能・構造の関係が明らかになれば、将来的にMRI検査の中でも比較的負担の軽い撮像(横になるだけで課題などはなし)で吃音の状況が把握できる可能性がある。吃音の原因の中でも言語に関係する脳部位(ブローカ野)での機能的もしくは器質的な違いが吃音のある群ない群であることが知られている(Sommer, et al., 2002; Chang, et al, 2015)。吃音から回復した群との白質体積の違い(Chang, et al., 2018)などが明らかになってきており、これらの知見を基にした吃音の脳機能のモデル化も進んできている(Chang, et al., 2020)。2020年度は、前年度に引き続き耳鼻科医、言語聴覚士、臨床心理士との連携し、主に介入前の脳機能構造データ解析を行った。安静時の脳活動測定から得られたデフォルトモードネットワークの測定データについては、吃音のある人の群において、ネットワークが強い部分・弱い部分があることが徐々に明かになってきている。介入後の追跡を見据えて心理実験データとの相関分析を進めたが、昨今の感染症拡大の影響を受け、新たに実験を行うことが困難になっており、最終年度であったため延長とすることとした。連携機関である国立障害者リハビリテーションセンター研究所と定期的に進捗報告を行い、これまで得られたデータの解析を見直し、脳機能・構造画像と吃音の心理指標の関係に関して分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、脳機能構造測定として脳の白質(神経繊維)の接続を測定する拡散テンソル画像法にて角回白質部分の接続性が低下していることを報告している(Yasu, et al. , 2018)。本年度は、昨年度までに測定した脳機能構造画像(拡散テンソル画像、安静時脳機能画像)のデータ分析を進めた。拡散テンソル画像については、統計処理を行う前処理として、脳神経画像(白質画像)の作成が完了した。デフォルトモードネットワークの解析では、国立障害者リハビリテーションセンター研究所と連携し、相関部位についての解析を進めた。その結果、まだ初期の知見だが対照群と比べ吃音群で安静時のネットワークが強い部分・弱い部分が明らかになってきている。
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