移動活動に大きな影響を及ぼす運転中止は、高齢化とマイカー依存の強い公共交通の脆弱な地域では重要な問題になっている。特に認知症ドライバに対する運転中止の宣言が努力義務となる医師は、患者や家族の生活を支える地域医療の立場ゆえに意思決定が難しい場面が多い。また、高齢ドライバは、運転技能に対する自己評価が実際より高い傾向があることから、運転中止に対して本人が納得することが困難な場合もある。運転中止宣告による日常生活や心理的な影響を鑑みると、運転においても早期介入が必要だと考える。 そこで、本研究では「軽度認知障害(MCI)の段階でドライバが運転継続や断念を受容しやすい、客観的な自己評価手法を取り入れた実用的な運転助言支援方策を提案すること」を目的とする。そのために、(1)病院で実施可能な実用的な運転助言支援モデルの作成、(2)日常運転行動の自己評価に有用な定量的・客観的評価指標の提案、を行う。 本年度は、感染症対策のため、患者へのフィードバックは実施せず、病院へ日常運転行動や測定指標による結果の報告を行った。また、DSを用いて取得したデータの追加分析を実施した。具体的には、運転行動に関わる注意機能等の認知機能に関わる基本的な検査結果、昨年度実施した運動を調整する機能に関連する指標による評価や、ドライブレコーダにより取得した日常運転行動を説明する評価シートを作成した。また、これまでに取得したDSデータを判断過程の反応の観点から追加分析を実施した。
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