研究課題/領域番号 |
18K10744
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石川 朗 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10295371)
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研究分担者 |
山本 暁生 神戸大学, 保健学研究科, 特命助教 (30758842)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | COPD / リハビリテーション / 6分間歩行 / 呼吸数 / バイタルサイン / ウェアラブルセンサ |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理目標の一つに運動耐容能を高めて身体活動を維持する ことが掲げられている。日常生活場面での運動能力をよく反映する運動耐容能の評価法として6分間歩行試験が理学療法士やリハビリ医を中心に国内外の臨床場面で行われている。歩行中の息切れが同試験の歩行距離などのアウトカムに関連することは報告されているが、実際に同試験中の呼吸数・胸郭運動がどのようなパターンをとるのか、また試験成績との関係は分かっていない。本研究はCOPDの患者を対象に6分間歩行試験中の呼吸数の変動パターンが、運動耐容能にどのように影響しているのか、呼吸パターンに影響する要因間との関連について明らかにすることを目的としている。 研究初年度となった本年度は、実験手順の確立および、基準となる健康な成人における運動中の呼吸パターンを明らかにすることを目的に健常者を対象にウェアラブルセンサを用いて6分間歩行試験を行った。並行して三つの協力医療機関においてCOPDの患者を対象に6分間歩行試験中の呼吸数を測定するための手続きを進めた。年度末までに三つの医療機関において倫理審査の承認を得て測定を開始して23名のCOPD患者から協力を得てデータを蓄積している。 実験では、1分毎の呼吸数([回/分])を主要な指標として呼吸数の時系列変動を分散分析で比較した。これまでのデータ分析から呼吸数は、両群共に歩行開始1分目から安静時よりも有意に増加していること、要因間に交互作用を認めてCOPDは健常群より安静時、歩行2分目に呼吸数が高く、3分目以降には群間の差が見られないことが明らかとなった。 本年度に行った実験結果は国内外の学会にて成果を発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度前半は、6分間歩行試験中の呼吸数計測のための実験手順の確立および、基準となる健康な成人における運動中の呼吸パターンを明らかにすることを目的に健常者を対象にウェアラブルセンサを用いた6分間歩行試験のデータ分析を行った。実験は、健康若年成人23名を対象に行い、対象者はストレッチセンサを用いた胸郭運動からの呼吸数計測システムを剣状突起の高さに装着し、パルスオキシメーター、呼気CO2モニタと同時計測した。並行して協力医療機関においてCOPDの患者を対象に6分間歩行試験中の呼吸数を測定するための手続きを進めた。年度末までに三つの医療機関において倫理審査の承認を得て測定を開始して23名の協力を得てデータを蓄積している。分析は1分毎の呼吸数([回/分])を主要な指標として呼吸数の時系列変動を疾患の有無および測定時点を要因とする分散分析で比較した。 分析の結果、呼吸数は、両群共に歩行開始1分目から安静時よりも有意に増加していた。要因間に交互作用を認め(P=0.0008)、COPDは健常群より安静時、歩行2分目に呼吸数が有意差をもって多く(P<0.005)、3分目以降は呼吸回数に群間の差を認めなかった。呼吸数の時系列変動および健常者とCOPDの比較について定性的な分析を第43回日本運動療法学会で報告し、第29回呼吸ケア・リハビリテーション学会にて定量的な分析の一部を報告、第59回日本呼吸器学会での演題登録が受理されている。年度中盤には呼吸を含むリハビリテーションの最新動向を把握するために国際学会へ参加し情報収集を行った。年度後半には実験で用いたウェアラブル呼吸数センサの性能評価として既存のインピーダンス式ベッドサイドモニタとの運動中の呼吸数の誤差を比較し、同等の精度で測定が可能であることを23th congress of the Asian Pacific Society of Respirologyで報告した。以上から健常群の測定、患者データの蓄積について概ね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、先の「現在までの進捗状況」で述べたとおり2018年度において三施設にて倫理審査が完了して、医療機関での測定が開始できたことから引き続き症例数の蓄積を行い、目標とする症例数に近づけることが第一の目標と定めている。症例数の蓄積を促進するために、新たな協力医療機関との調整を進めていく予定である。昨年度までに二施設において目標症例数に達したことから、同施設での測定を終了し、研究資源を残る施設での測定に集中することで確実に症例数が増えるように実験の体制を見直していく計画である。 更に呼吸数の時系列変動について、年齢などの重要な交絡因子をマッチングさせることでCOPD群の特徴をより高い精度で示すべきとの指摘を2018年度の成果発表の中から得られた。気流閉塞の無い年齢をマッチングさせた高齢者を対照群とするため、被検者の確保に向けた取り組みも進めていく。対照群の選定及び測定環境の構築については、研究協力者を新たに加えながら確実に進捗させていく予定である。
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