研究課題/領域番号 |
18K10747
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂井 伸朗 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60346814)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ヒト歩行 / 二足歩行ロボット / ロッカーファンクション / 筋骨格構成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はロッカーファンクションを再現しうる、実歩行可能な筋骨格型ロボット歩行シミュレータを開発することである。H30年度は、シミュレータの筋強度ならびに駆動タイミングを調整して実歩行を行ない、歩容をヒトに歩行データと比較した。また、特にロッカーファンクションの説明において最初に説明される荷重応答期からヒールロッカーに重要な役割を果す、前脛骨筋の強度を変化させた場合の歩容の変化について調査を行ない、前脛骨筋弛緩の場合に立脚中期において底屈、すなわち地面に対し脛骨が後傾するとともに、前脛骨筋による脛骨の牽引減少による腰部速度の低減が起ることが確認された。また、9mm程度の段差乗越え試験においては、位置エネルギ上昇により、乗越え頂点での腰部速度が半分以下となったが、これは、本シミュレータが倒立振子としての考え方から運動エネルギと位置エネルギを相互変換しながら歩行する様子として確認された。足部構造については、アーチ構造と前足部を再現する機構を構成し、シミュレータに装着した上で、歩行可能であることが確認された。詳細な解析はこれからであるが、前足部のない前モデルと比較し他場合、前足部のないモデルでは蹴り出しを行ないながら歩行するというヒト歩行と類似しない面を持っていたのに対し、足部構造のある場合は蹴り出しではなく、ヒト歩行のように脛骨の押し出しに類似する様子で歩行したが、これらの調整と定量的解析が求められる。本助成で一つの項目であった軽量コンパクトかつ高出力で力制御可能な小型ギヤボックスの開発を行ない、力覚条件下で6ユニットマルチラテラル制御において衝突可能な反応速度を持つ制御系の構成を行い、性能を確かめた。コンピュータシミュレーションでは筋力を力制御することで実機同様に歩行可能であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画通り進めている。まずH30年度は当初のシミュレータについて、定量的な歩容の解析を行なうとともに、前脛骨筋弛緩モデルで荷重応答期~立脚中期の歩容の変化とそれに伴う腰部移動速度の解析を行なった。また段差乗越えによりヒト同様の倒立振子様の歩行であることを確認した。H30年度の一つの主要な開発目標としていた、筋特性に近づける軽量コンパクトな力覚を有するギヤボックスは、現状のモータ個数と同じ6ユニット開発し、力覚性能と駆動性を6ユニットによるマルチラテラル力覚動作により確かめた。これにより駆動時の実筋力計測が可能となる予定である。また、足部構造については前足部とアーチ構造を持つシミュレータを実歩行させ、特に前遊脚期の弾性反跳と関連する前足部の強度と歩容の変化について調査を行なった。学会発表を2件行い、内1件は賞を拝受した。
|
今後の研究の推進方策 |
コンピュータシミュレーションは歩行が可能であったが、学会発表時に動画を紹介するのみであったため詳細については今後発表する計画である。足部構造を有するシミュレータの実歩行は、前足部強度の変化と歩容の関係について定性的な内容に留まる内容で学会発表を行なったが、弾性反跳の役割やアーチ構造といった足部構造の具体的な解析を進める計画である。特にアーチ構造は申請者等の想像以上に衝撃吸収能やそれに続く歩容に影響を与えそうである。H31(R1)の一つの大きな目標は、新たに開発した力覚可能な軽量高速ギヤボックスを使用したシミュレータを開発し、当初モデルでモータ駆動速度の限界により再現し得なかったよりヒト歩行に近い歩容の再現が可能となることが期待される。
|