研究課題
加齢に伴う頻尿、尿失禁などの過活動膀胱を対象とした。過活動膀胱には抗コリン薬を中心とする薬物療法が一般的に行われるが、口渇・便秘などの副作用やリバウンドの問題がある。高齢者は薬物の有害事象が発生しやすい。このような背景を踏まえ、我々は、薬物・電気・磁気刺激といったニューロバイオニクスという手法を用いて下部尿路の自己修復能力を高める研究を積み重ねてきた。本研究は、低出力体外衝撃波により組織水分中に発生した気泡による一過性の傷害(キャビテーション崩壊)とそれに伴って生じるミクロジェット水流が組織再生を促し、加齢にともない失われた下部尿路の自己修復能力を高める可能性に着目した。まず、ラット加齢に伴う排尿障害は尿道機能の低下が関与しており、尿道平滑筋に対する一酸化窒素(NO)の作用が減弱していることを解明した。次に、ラット電気生理学的手法を用いて外尿道括約筋の機能低下が排尿効率の減少に影響し、組織学的にも外尿道括約筋の萎縮、線維化といった不可逆的変化が起こっていることを明らかとした。2020年7月に導入した低出力体外衝撃波において、LPS(リポポリサッカリド)腹腔内投与よる膀胱痛、頻尿、持続性尿意を主体とした間質性膀胱炎モデルにおいて、痛み行動の改善、頻尿の改善がみられた。今後、さらに加齢ラットに低出力体外衝撃波照射実験の予定をしている。以上より、低出力体外衝撃波による組織構造の刺激は膀胱壁内微小循環、神経終末内の炎症性物質の減少を誘導し、これまでの我々のニューロバイオニクス手法を凌駕する長い効果発現が期待できる可能性が示唆された。これにより薬物に頼らない過活動膀胱の新たな低侵襲治療法の確立を目指す。
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