研究課題
本研究の目的は食事動作を個々の関節の運動として解析するだけでなく,肩関節,肘関節,前腕及び手関節を含む上肢全体の協調性を運動学的解析に加え,各関節に関連する二関節筋群の筋活動を筋電図的解析にてその特徴を明らかにすることである.特に本研究の特徴として,関節固定装具を用いた“関節制限モデル”にて,上肢の一つ一つの関節可動域制限が他の関節にどのように影響し,最低限必要な可動域について明らかにすることである.本年度は,2段階に分けて①関節制限なしでの箸動作の時の筋電図解析,②手関節での関節制限時の箸動作の時の筋電図解析を実施することとした.対象は箸動作の障害となるような構造・機能低下のない右利きである者30 名,平均年齢21歳,男性 16名,女性14名とした.筋電の測定にはクリニカル DTS EM 712 酒井医療 を使用したデュアル電極にEMGプローブを接続し,計測した筋活動を筋電解析ソフトウェアに転送し波形を記録した.課題は,直径 30 mm 重さ10gの球体を机の手前から100mmの位置に設置した皿の上に置く塗箸を使用してその球体を口の高さまで持ち上げる動作を10回繰り返すこととした.その際の手指屈筋群,母指球筋群の筋活動,球体の操作時間を測定した.その結果、手指屈筋群では最大筋力の約7%、母指球筋群は最大筋力の約15%の筋活動量であった。同様に手関節固定時の筋活動については新型コロナウィルス感染症拡大のため被検者が都合がつかなくなり実施できていない.関節制限による筋活動と制限なしの筋活動の比較は今後実施予定である.
4: 遅れている
本研究の進捗状況は,遅れている状況である.その理由として,関節制限モデルで関節を固定装具で固定するモデルであったがその場合では筋電図測定のための筋の露出ができなくなり,筋電測定が不可能である状況にあった.そのため,測定筋の選定とオリジナルの関節固定装具の作成に検討を要したが、関節固定装具は作成できた.しかし,新型コロナウィルス感染症の拡大のため、当初予定していた被験者の調整が困難となった。
2020年度は肘関節・前腕・手関節モデルによる食事動作について、すでに作成した装具を基に,動作の解析及び筋電図測定を進める.被験者については、若年者を予定しており,新型コロナウィルス感染症の影響で被験者確保が難しい場合が考えられる.その際には、本学の感染症対策に基づいて,できる限りの範疇で実験の実施について検討する.
計画が遅れているため,計画的に被験者の募集及び実験を速やかに進める.被験者は定期的に募集を行い,100名程度を予定しており,その為の謝金とする。また、筋電図測定と等に用いる消耗品、実験補助者のに対する謝金、論文校閲・論文投稿費用等として使用予定である.また有識者からの助言の予定もありその旅費として使用予定である.