研究実績の概要 |
本研究は手関節・前腕の関節制限モデルを用いて手関節と前腕を固定した際のスプーン操作時における肩甲骨の動きやその他の関節可動域、筋活動を通常時と比較し、その相違について明らかにすること及び臨床応用として上肢関節疾患に対するアプローチにおける肩甲骨への介入の重要性を明らかにすることを目的とした。 対象は、日常的に食事を右手で行っている者、四肢・体幹に運動障害および整形外科疾患の既往がない者、関節痛がない者、乳製品のアレルギーがない者とし、すべてに該当する健康成人17名とした。本研究の実施に伴い倫理的配慮として、対象者には書面及び口頭にて研究内容を説明し承諾を得た(承認番号:2107-11)。課題は通常時と手関節固(背屈30°、前腕回外20°)時で対象物(ヨーグルト)をスプーンを用いて食べる動作とし、その際の関節可動域と筋電図を計測した。解析は、動作をすくう相、口へ運ぶ相、戻る相に分け、相ごとの肩甲骨とその他の関節の動き及び筋活動との関係性について確認した。 その結果、最大値は通常位と比較し、体幹屈曲(通常位11±6°、制限時18±8°)、肩関節外転(通常位53±21°,制限時76±22°)・外旋(通常位-4±14°,制限時3±22°)、肩甲骨内旋(通常位2±5°,制限時5±6°)・後傾(通常位1±7°,制限時-4±8°)・下方回旋(通常位-5±3°,制限時-8±6°)の角度が有意に増加した。最小値は通常位と比較し、肩関節外転(通常位20±10°,制限時45±17°)、肩甲骨後傾(通常位-11±8°,制限時-20±9°)・下方回旋(通常位-14±5°,制限時-18±6°)の角度が有意に増加した。筋活動はすくう相において僧帽筋上部、三角筋中部、上腕二頭筋が有意に増加し、関節角度はすくう相及び口に入れる相において肩関節の代償動作に伴って肩甲骨角度が有意に増加していた。
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