最終年度は、統計処理及び論文執筆を主として実施した。本研究は掌屈位・中間位・背屈位の手関節の関節制限スプリントを用いて手関節を固定し,食事動作時の手関節の関節可動域制限が他の上肢関節にどのように影響するのか,また最低限必要な関節可動域について確認することを目的とした.対象は普段右手で食事を行い,上肢関節可動域等のない本学学生女性10名とし,課題は対象物(ヨーグルト)をすくい,口まで運ぶ動作を行った.結果,手関節制限時の最低限必要な関節可動範囲は通常時より狭いということが分かった.ただし,手関節掌屈位制限時は他の関節での代償運動が見られ,中間位・背屈位制限時は代償運動等はなく食事動作を可能にしていた.以上より,手関節の骨関節疾患による掌屈位制限は他の上肢関節への影響が大きいため,臨床上は手関節背屈に保持する必要があると考える. また、上肢関節疾患に対するアプローチにおける肩甲骨への介入の重要性を明らかにすることを目的とした。対象は普段右手で食事を行い、上肢の関節可動域制限のない本学学生17名とした。課題は通常時と手関節固定時で対象物(ヨーグルト)をスプーンを用いて食べる動作とし、その際の関節可動域と筋電図を計測した。解析は、動作をすくう相、口へ運ぶ相、戻る相に分け、相ごとの肩甲骨とその他の関節の動き及び筋活動との関係性について確認した。その結果、筋活動はすくう相において僧帽筋上部、三角筋中部、上腕二頭筋が有意に増加し、関節角度はすくう相及び口に入れる相において肩関節の代償動作に伴って肩甲骨角度が有意に増加していた。前腕・手関節の制限により肩甲骨に与える影響は大きく、関節可動域運動等の介入時に肩関節などの上肢に加えて肩甲骨への介入を行うことが重要であると考える。
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