研究課題/領域番号 |
18K10755
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研究機関 | 東北文化学園大学 |
研究代表者 |
藤澤 宏幸 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (20316425)
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研究分担者 |
鈴木 博人 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 助教 (50635430)
村上 賢一 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 講師 (60433520)
鈴木 誠 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 准教授 (90382697)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 着座動作 / 座面幅 / 運動軌道 / 環境認知 |
研究実績の概要 |
本年度においては、第一研究として座面幅による影響について検証した。すなわち、自分自身の身体幅と比較して座面幅を認識しているのか、そして座面幅を認識した上で座面幅に適切な運動軌道が選択されるのかについて検討した。健常成人10名(年齢22.3±2.8歳、身長: 171.3±6.1 cm、体重: 65.8±7.9 kgw)を対象とした。座面幅条件の規定には座位臀幅を測定し、その時の幅を座面幅100%条件とした。座面幅条件は80、90、100、110、120%の計5条件とし、座面高は昇降台によって各被験者の腓骨頭の高さになるよう設定した。データ解析にはMATLAB (Math Work社製)を使用し, 独自に作成したプログラムにて解析した。アンケート結果における各座面幅条件での最頻値は座面幅80%条件で”狭い”と回答したのが全体の50%、座面幅90%条件で”少し狭い”が50%、座面幅100%条件で”普通”が40%、座面幅110%条件で”少し広い”が50%、座面幅120%条件で”広い”が60%と座面幅の増加に伴って”広い”と認識する傾向を示した。座面幅と体重心軌道の関係性については、座面幅毎による体重心軌道長、床反力first peak、平均体重心速度、所要時間に有意差は認められなかった。アンケート調査においては、座面幅の増加に伴って”広い”と認識する傾向を示しており、着座動作遂行においては身体幅に対しての座面幅を認識している上で運動軌道が形成されていることが示された。しかしながら、体重心軌道と座面幅による関連性は示されず、環境を認識しているにも関わらずその環境に適当な運動戦略は選択されなかった。つまり、座面幅情報による”安全性”についての影響は少なく、むしろ他の座面幅要因となる座椅子までの距離や座面材質が着座動作戦略に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着座動作を検証するにあたり我々は座椅子装置を独自に作成しその特性について十分に吟味した上で座面幅による影響について着座動作を検証している。また、本研究は”安全性”が重力方向への運動軌道形成である着座動作においては優先されるという仮説のもと実施している。そのため、測定の中で”安全性”についての情報が被験者へ遮断されるよう測定手順についても設定した。さらに、座椅子要因は複数存在し、階層的に座椅子要因の影響を検証する上で、本研究ではまず座面幅による影響について検証している。上記内容を考慮するべく期間を要しており、これらが統制されたため次年度研究は上記設定のまま検証することが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
日常生活動作の運動軌道形成においては周囲の環境認知による情報を元に、その場の環境に拘束されながらも限られた運動自由度の中でエネルギーコストを最小化するべく運動軌道を形成している。そのため、我々は座椅子要因によって着座動作戦略が異なる仮説を元に座面幅との関連性について検証した。しかしながら、座椅子要因は複数存在するため今後は坐椅子との距離、座面材質による影響について検証する。座椅子との距離においては、座椅子までの距離が遠くなるため積極的に不安定性をつくりださなければ転倒してしまう。そして不安定性が増加することは衝撃力増加を招き”安全性”が侵されてしまう。この点は高齢者の着座動作における転倒、または危険回避戦略を獲得する上で体重心水平移動の関連要素を明らかにすることは重要と考えている。また、座面材質は衝撃力を物理的に緩衝する要素であり、外部接地によって安定化を図る身体接触型安定化課題においては重要な検証課題である。特に、実際には座面材質が柔らかいも視覚的には硬く認識できるよう座面を工夫することで環境認知と運動戦略の関係性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度であり、成果発表については次年度以降となるため旅費の使用が予定よりも少なった。また、被験者がボランティアでの協力となったため謝金の支出がなかった。加えて、消耗品等の購入が最小限となったことが、次年度使用額が生じた理由である。次年度においては、成果発表および情報収集のための学会参加を積極的に行い、適切な謝金の支払い、計画的な消耗品の購入に努める。
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