本研究は3次元運動解析システムはPOLHEMUS社製LIBERTY本体と体表貼付式の小型センサーを用いて脳卒中片麻痺の麻痺手の機能回復を定量化し、片麻痺患者の麻痺手における上肢パフォーマンスの向上と3次元動作解析結果の関係性を示すことを目的とした。 令和3年度には、急性期脳卒中片麻痺患者3例に対して2週-1ヶ月ごとに測定を行った。測定は麻痺手重症度検査、パフォーマンステスト(Box and Block テスト)、書字の3次元動作解析を行った。書字動作解析は平仮名を4つのサイズのマス(2.0cm、5.0cm、7.5cm、15cm)に個人の自由な書体で書字させ、対象者の書字中のペン先、示指基部、橈骨遠位端の評点の三次元座標から書字時間、ペン先速度・筆跡の均一性指標、ペン先と手・指の分離性指標を求めた。 結果、すべての症例について麻痺手の重症度指標、パフォーマンス指標、書字動作指標に改善がみられたが、従来の臨床指標の回復の幅は書字測定から得られた分離性指標の回復の幅には必ずしも一致しなかった。うち1症例の初回測定と4ヶ月後の比較においては、麻痺とパフォーマンスに変化がないにも関わらず、書字時間、筆跡の均一性指標、ペン先と手・指の分離性指標に改善がみられた。 このことから、動作戦略の変化によって麻痺の改善を伴わないパフォーマンスの向上が可能となること示すとともに、速く均一に読みやすい字を書くというADLの側面は手指の麻痺や筋力などとは独立した因子である可能性を示した。
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