脳卒中後の生じる運動失調の原因は多種存在する。本研究では、振動刺激によって軽減する運動失調を有する対象者の障害部位を後ろ向きの観察研究を行うことで確認した。結果、重症度や損傷範囲よりも、CTおよびMRIにおいて、視床レベルのスライドにおける皮質脊髄路の損傷に加え視床から島皮質間、もしくはそれ以下の小脳脚の損傷を伴わない皮質脊髄路の損傷に伴う運動失調であることが明らかになった。さらに、それらの対象者を有する回復期リハビリテーション(リハ)病院で上記の特徴を有した少数の対象者に対し、一般的な上肢リハに加え、振動刺激を実施し、前後比較研究を通して有意な上肢機能と運動失調の改善を確認した。これらの結果から、上記の損傷部位を有し、運動失調を有する対象者を対象にProspective randomized open blind end-point studyによるランダム化比較試験を実施した。介入群には2分間の振動刺激の後、1日40分のCI療法を実施し、対照群は1日40分のCI療法を単体で実施した。介入期間は1週間とした。主要評価項目は上肢のパフォーマンスを測るBox and Block test(BBT)とした。その際、副次評価項目として、いくつかの上肢機能・活動に対する評価に加え、BBT実施中の麻痺側上肢の運動失調の程度を確認するために、共同研究者が開発した加速度計も実施した。最終的には、21例の症例を集積したものの、開始後に2名が脱落したため、19名が解析対象となった。一般線形混合モデルによる分析の結果、両群間に有意なアウトカムの差は認めなかった。しかしながら、介入前後の変化量については、介入群の方が高かった。この結果から、振動刺激は上肢運動機能を僅かに効果がある方法である可能性が示された。この結果を2024年のアジア太平洋作業療法学会に投稿中である。
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