研究実績の概要 |
本年度は姿勢、特に上肢挙上時の体幹伸展の過度の使用が肩甲上腕関節と肩甲骨運動、そして三角筋と僧帽筋上部線維の筋活動に与える影響について検討した。方法:広島国際大学に在籍する19歳から30歳までの健常若年者50名 (男性25名, 女性25名) が本研究の被験者として参加した。後頭部,胸背部,殿部を壁につけ,体幹を伸展した状態での上肢挙上検査を行った。挙上角度はデジタル傾斜計WR300 Type2(Wixey社, USA)を用いて測定した。課題動作は座位にて肩甲骨面上で上肢を最大挙上する動作とした。動作中の運動学的データは6自由度電磁センサLIBERTY (POLHEMUS社, Vermont) を用いて取得した。動作中の筋活動データは,筋電計(NORAXON社, USA)を用いて取得した。研究1では,上肢挙上検査で挙上角度が大きい群をコントロール群,小さい群を体幹伸展群とし,運動学的データの比較を行った。研究2では,上肢挙上検査での上肢挙上角度と課題動作中の筋活動の相関関係,筋活動の変化の比較検討を行った。結果:研究1では,体幹伸展群は,コントロール群と比較し,有意に肩甲骨後傾角度が小さかった (p = .048)。その他については群間で有意差を認めなかった。研究2では,体幹伸展群がコントロール群より有意に上部僧帽筋%MVICが大きかった (p = .012)。上部僧帽筋,三角筋前部線維,前鋸筋の%MVIC及び上部僧帽筋 / 中部僧帽筋活動比は,体幹伸展を制限した上肢挙上検査で挙上角度と負の相関を示した。結論:壁を用い体幹伸展の制限した上肢挙上検査において肩甲骨運動と筋活動の違いを捉えることできる可能性を示した。つまり,体幹伸展を制限した上肢挙上動作にて,制限条件なしの上肢挙上角度と大きく挙上角度が減少する者は,肩甲骨後傾角度の不足を反映していることが示された。
|